A-dat/SPDIF reciprocal format convertor (A-dat SPDIF 相互変換機) ©Y.Utsunomia 2008-2010
この製作情報は宇都宮の自家用機材についての製作ノートの抜粋で、再現性は考慮されているものの、この製作による利用者の不利益や何らかの損害から、筆者、サイト運営者は免責されるものとします。自己責任においてご利用下さい。
ヘッドホンアンプに続き、第2弾がいきなりこの規模だと敬遠されるかもしれませんが、実用性を求めるとこの規模になってしまいます。とくにHD24ユーザーからのリクエストが強いので、優先して掲載します。
また、HD24ユーザーに限らず、広く通信に利用可能なA-DATインターフェースの理解にも本記事は大変有用と思います。
AD/DAコンバータは後日シングルカットします。
○仕様・目的・開発背景
A-dat/SPDIF相互変換(オプティカル)
スタンドアローン動作
ロスレス・フル24bit動作
サンプリング周波数50KHzまで対応
高品位
伝送エラー表示、レポート出力機能(オプション)
再現性、拡張性
そこそこの部品調達性
audacityプロフェッショナル・マニュアルでも触れているが、筆者の調査と評価から、録音再生そのものについては、専用機(レコーダー)の使用を強く推奨している。PCで品位を落とさずにできることは、file to file の編集操作のみで、ストリームからファイル(録音)やファイルからストリーム(再生)については、専用機に分がある、というもので、少なくとも信頼性について、機動性について、サルベージ性について、起動/停止の安全性について異議をさしはさむ余地は無いと思う(いずれはPCベースも、もう少しマシになってもらわねばならないが)。
専用機として筆者はAlesis社HD24、ZOOM社R-16、いくつかのフラッシュメモリーを用いたレコーダーを推奨しているが、その中でもHD-24は
「最後のMTR」ともいえる品位と信頼性を持っており、筆者の環境では、スタジオ内外でのマルチ録音、マスタリングなどに使用しているが、それまでの2インチ・テープマシン(STUDER社A-800MK3-16)からの移行にあたり、多くの周辺装置の開発を行った(周辺装置がなければスタジオとしては機能低下になるため、移行はできない)。
その一つがロスレス(バイナリ・レベルで全く差分が無く、リサンプルせず、かつワードクロックに柔軟に対応し、伝送路にエラーが存在する場合、取りこぼし無くそのことがレポートできる機能を持った)フォーマットコンバータであった。
製品としてはRMEやAlesisの製品があるが、いずれもリサンプルコアでおおむね良好な変換ができるとは言え、上記のようなロスレスとは幾分意味が異なっている(何も考えずに利用するには好適なのだが)。
とくに筆者が推奨するようにHD24で再生しCDライターでCDDAを作成する(つまりストリームtoストリーム)場合、必携なアイテムであり、無ければ話にならない。
Alesis社のテープA-datによって、急速にスタジオ機器の低価格化は進んだが、その中で社が果たした事業は単に価格破壊を推進したわけではなく、「A-datプロトコル」と呼ばれる仕様によってテープ上に「デジタル信号をアナログ形式」で記録再生し、またオプティカルリンクで機器間を結び同期を容易にしたが、その利用については広く公開されており、現在に至るも採用している機器は多い。
このプロトコルは当初から24bit深度を持っており、現在においても何ら問題なく使用でき、ライセンス(後述)を受けたデバイスを使用することで同期や品位の保障がなされる。ライセンスはAlesis社の生産したインターフェースチップを使用することで自動的に認可されるが、ライセンス料は「無きに等しい料金」であり、個人ユーザーであっても使用可能で、チップを使用することで「Alesis入ってる!」を名乗ることができる。
またそのチップも大変使用しやすく、工場は個人に対しても適切価格で販売を行っている。とはいえ、現在窓口になっている輸入代理店は日本には無く、回路図を公開する以上、何らかのチップ斡旋は行いたいと思っている。
いずれは某有名部品販売店で対応していただくべく交渉中ですが、当面はメールなどで当方に問い合わせていただきたい。
☆いきなり難易度が高そうだが、それぞれのブロックごとに見れば、それほど高度ではない。回路図ではフルオプションなのでたいそうに見えるが再現性は良く、とりあえず基本部分から作ればどうということはないだろう。いくつかのICはSMD(表面実装パーツ)で、ハンダ付けそのものが大変そうに見えるが、これについてはハンダ付け動画をアップする予定です。また上記の斡旋を行う場合、ピッチ変換基板にSMDをマウントするところまでは希望により行う予定です。
○回路解説
Alesis社のチップについて
一枚の回路図に描かれていますが、左上から「SPDIFからA-dat」への変換部分、その下が「A-datからSPDIF」への変換で、それぞれたった2つのインターフェースチップを用いているだけです。(ただしA-datからSPDIFではクロックの作成と、データのセレクタが必要なので、その分複雑になってはいます。
Alesis社(現在はWaveFront社が生産)のチップは、このようなインターフェース、AD、DAコンバーターなどいずれもクロック供給に独特の工夫があり、このことが大変設計や製作を容易にしている。
その工夫とは、一般的にこれらのデジタルオーディオチップには、ワードクロック(日本のメーカー呼称ではLRCK :やや意味が異なるが、実質はワードクロックと同義)・・・いわゆるサンプリング周波数と同じ周波数、位相(タイミングなので時性といったほうが正しいか)のデューティー比50%の方形波信号と、ビットクロック(BCK :プロトコルによって異なるが、ビット転送用のクロックで一般的にはサンプリング周波数の64倍の方形波信号)、マシンクロック(MCK :プロトコルによって異なるが、チップ内のメインカウンタを動作させるためのクロックで、サンプリング周波数の128倍または256倍の方形波信号)が必要なところ、Alesis社のチップではクロックワークをチップ内に内蔵し、チップに供給する必要があるのは、サンプリング周波数と同一のワードクロックのみで動作するように設計されている。もちろんこれらを実現するにはロージッタのPLLやカウンタを内蔵する必要があるが、A-datプロトコルに最適化されているため、使用者はそのことをあまり意識しなくても良いように設計されている。(つまり個人ユーザー向けと言う意味)
(このクロックワークは、本来ややこしくタイミングを揃えるにはある程度のテクニックが必要で、単なるバイナリカウンタではあまり良い結果が得られない)
チップ間はI2S(32bit幅)と呼ばれる形式で情報のやりとりがなされるが、使用者は自分の使用したいチップのデータシートとフォーマットをつき合わせて、適切に設定を行えば良いだけだ。(といってもそこが敷居の高さかも)筆者はこれらのチップと出会って、それまでの苦労の多くがクロックワークであることや、そこに潜むジッタなどに翻弄されていたことに気付いたものだ。それくらい単一クロックは自作ユーザーには朗報なのです。後は高精度、ロージッタのワードクロックを用意するだけなのだから・・。
SPDIF入力から解説
TORX-176はTOS-LINKの定番ですが、ひょっとすると品薄かもしれない。
同等品で可能だが、必ずデータシート、最低ピン配置くらいは入手し、確認すること。回路図では同軸入力も付いているが、パルストランスが必須なので、用意できない場合は省略可能。省略する場合は、0.01μFのトランス側とアース間に75Ωを挿入。
TORX-176の電源端子(Vcc)はインダクタ(コイル)を通って電源(風船のような記号で表されている)5Vに接続されているが、このインダクタは必須。
CS8412はSPDIF受信インターフェースの定番で、ロージッタ、高品位で定評がある。またVフラグ出力(メディア再生時に起こったエラー履歴のうち、訂正できなかったものをサンプル単位で出力)を持ち、またU-bitやC-bitの出力を持つため、各種の解析に利用できる。しかし現在では入手難(このままの回路図で使用できるのは、CS8412、CS8414まで)。
より上位互換チップにCS8416があるが、回路は全く異なるので、この回路図のままでは利用できない。CS8416用の回路図は別の機会に紹介予定。
<<表記メモ>>
チップの端子外側に書かれているコメントだが、
NC 無接続(何も接続しない・・使用しない出力や、IC内部でプルアップ、プルダウンされている入力)
Option 拡張のための出力・・多くの場合は回路図にコメントが、、、無いことも
note 注意書きありの印
Reset リセット入力・・リセットには正論理(+5vでリセット)と負論理(0vでリセット)の両方がある。負論理の場合は、Resetの上に横棒が表記される。
汎用でないチップの場合は、電源端子の配線を表記する場合もある。
A Vccなどとキャラクタ内に表記されている場合は、その端子がチップ内部のアナログ部分(CS8412の場合は、内部PLL回路・・・重要!)であることを示し、D Vccの場合はチップ内部のデジタル部分の電源だ。
同じ5vでも、必要に応じて供給回路を分離する必要があるが、この作例では全く同じに(両方ともに)5vを供給するだけで問題ない。
GNDはアース(0v)であるが、同様にデジタルとアナログに分離されているチップもある。これまた必要に応じて分離供給するが、「それらは必ずどこかで1点に接続されなければならない」ことを忘れてはいけない。ちなみに10Ωはノイズフィルター。
20番端子(タイミング設定)は内部PLLの時定数設定で、できるだけ安定で高周波特性の良い部品(ポロプロピレン・コンデンサなど。セラミック不可)を用いる。その他の0.1μFはすべてパスコンなので、ICの足になるべく近く配置。積層セラミックで可。
複雑に見えるが、入力は2本、出力も2本、電源も2本、でOPampよりも少ない配線数だ。
Fsync(word clock)は、SPDIF入力から分離されたワードクロックだ。
サンプリング周波数と同一の周波数。
dataは音声信号である(32bit,L,Rの順でシリアル表現)。
このように、わずかな入出力と電源しか持たないので、SMD(表面実装部品)の場合などのようにピッチ変換基板で工作する場合は、このわずかな部品や配線は、ピッチ変換基板上にマウントし、ブロックとして扱うとよいだろう。ピッチ変換基板上にトスリンクコネクタも取り付けてもよい。
<Interface_module_1.jpg を参照>
<Interface_module_2.jpg を参照>
(写真の作例は、ユニバーサルDAコンバータのSPDIF受信部分のモジュールで、本機とは別のものです)
なぜならトスリンクコネクタとインターフェースチップの配線は近いほど良好だからです。離れた配置では意外とノイズを拾いやすく、結構苦労するかも。
インターフェースチップとは
コンポジット信号
SPDIFもA-dat I/Fも通信プロトコルの名称だが、これらは同じTos-Linkオプティカル(光ファイバーケーブルによる・・ライトパイプとも呼ばれる)で接続され、一見互換性がありそうにも見えるが(実際に兼用のI/Fカードもある)、通信速度も方式も全く異なる。同じようにオーディオデータを1と0のデジタル信号にして送っているように見えるが、中身はコンポジット信号(複合された、と言う意味)で、音声信号以外に、ワードクロック、ID、履歴、エラーの有無、タイムコードなどと同時に転送されており、それぞれはプロトコルが全く異なっているため互換性はない。
例えば旧フォーマットのSPDIF(現在は拡張されている)では約3Mbps、A-dat I/Fでは10Mbpsの通信速度を、またSPDIFではバイフェーズマークと呼ばれる変調により、一定時間あたりの1と0の比が1:1になるように暗号化されているが、A-dat I/Fではそのような変調の余裕すらない。この変調によりSPDIFではトランス結合による同軸ケーブル伝送ができる(伝送帯域にDCは不要)が、A-dat I/Fではトランス結合による同軸ケーブル伝送はできない(伝送帯域はDC~10MHz程度必要)。その理由は1と0との比率が1:1ではなく偏りがあり、その偏りが伝送するデータで変動するため、トランスの励磁状態が変動し、オフセットが乗ったような状態になるため、次段が正常に受信できなくなるためである。アナログビデオ信号のように、フレームごとにオフセットを調整するクランプ回路などを併用すれば良いのだろうが・・。すなおにDC伝送するかオプティカルリンクするのが得策。A-DATオプティカルを同軸伝送するための変換回路は、別に掲載予定。
専用IC
インターフェースチップとはこのような複合された信号を送受信するための専用ロジックと同期回路、さらに物理的な伝送フォーマットのためのアンプで成り立っている。プロトコル(どのようなレートで、手順と内容を送り、また受ける方法)がわかれば、汎用のマイクロ・コントローラで送受信できそうなのだが(実際に、そうなりつつある)、同期や物理フォーマットまで考えると、SPDIFやA-dat I/Fについて言えば、そのための専用ICによるインターフェースの採用は利点が多いと言える。とくに本回路のようなスタンドアローン動作の場合は、システムの同期がインターフェースチップ内のPLLで完結し、動作安定性やジッタ特性も保証されることから、とくに少量生産の場合には有利である。
しかし、プロトコルそのものが拡張され、それらのチップにその準備が無い場合(SPDIFのCSシリーズでは通信レートそのものが変更拡張されているため、上位互換のみが確保され、CS8412では48KHzまで、CS8414では96KHzまで対応)は、旧チップで上位プロトコルには対応できない。逆にA-dat I/Fのように、通信レートは固定で、内部の割当のみで対応できるように先を見通した設計になっているものもある。
(AL1401A/AL1402では、初期のA-datI/Fから、最新のS-MUXまで、チップの設定のみで対応できる)ちなみにA-dat I/Fフォーマットそのもの(チップも)を、そのままLANケーブル用にアレンジした、スタジオ用のモニターシステムや、PAのマルチ回線に利用した製品もあるが、さすがに「ALESIS入ってる!」の表示はできないようだ。もちろんこれらの自作は容易だ。
コンポジットで無い信号
送信インターフェースチップに入力する信号や、受信インターフェースチップから出力される信号、ADコンバータから出力される信号、DAコンバータへ入力する信号は、コンポジットではなく、各クロック信号、データ信号、各コントロール信号、などを普通はばらばらに異なるピンから入出力するが、もちろんそれぞれの間には、守るべきタイミングがある。そのルールの一つが通称I2Sと呼ばれる形式であるが、とくに上記のようにクロックがワードクロック単一の場合は、面倒が全く無く、また再現性がよく、規模が大型化しても何らの問題も生じない。とにかく単一クロックは楽だ!!
A-dat出力(AL1401A周辺)
A-dat I/Fは光ケーブル一本で24bit、8チャンネルの同時伝送ができる。
また、1/2、3/4、5/6、7/8の各チャンネルが一組になっているが、AL1401Aの端子ではそれぞれ11、12、13、14ピンがそれにあたる。
SPDIFはもともとは2チャンネル伝送なので、設計の上ではA-datのどの2チャンネルへ送るか、セレクターを経ることも考えられるが、実務上はその必要はほとんどなく、また回路設計上もセレクターを設けない方がシンプルになる。つまり、SPDIFで受信した2チャンネルは、1/2、3/4、5/6、7/8のすべての2チャンネルに分配される設計にした。選択の必要がある場合には、メカニカルなスイッチによるセレクターか、後述するロジックによるセレクターを設ければよい。
☆SPDIF to A-dat 変換部分のチェックメニュー
○電源の確認(電源を投入せずテスターなどの導通テストで)
○0Vに接続されている端子
・TORX176のピン2、4 とボディー
注、トスリンクコネクタの外装は、単なるプラスティックに見えるが、一部の部品は導電性樹脂(おそらくカーボンコンポジット)でできているので、周辺部品が不要に接触していると、思わぬトラブルがある。テスターで計ってみよう!
・CS8412のピン8、16、17、18、21、23、24
・AL1401Aのピン1、6、8、15、16、17、18
・TOTX176のピン1
○+5vに接続されている端子
・TORX176のピン3(ただしインダクタ経由)
・CS8412のピン7、22(ただし22は10Ω経由)
・AL1401Aのピン7、9、10、20
・TOTX176のピン3
○0vと+5vがショートしていないこと
○上記が確認できたら、通電し、0v、+5vが正常に印加されていることを確認。隣接端子にテスターリードなどでショートしないように注意
○信号の確認
信号の確認には最低でも20MHz程度のオッシロスコープなどが必要!
周波数測定機能のついたテスターしかない場合についても記述
*とくの調整箇所もなく、配線に間違いが無ければ再現性も良いのでビビらずに作ろう。
☆SPDIFの入力にCDプレーヤーなどから入力を加え、電源を投入し
・TORX176のピン1に何やら同期の取れないパルス列があることを確認。
(ビットレートが計測できる場合、およそ2~3Mbps程度)
無い場合には、TORX176の周辺や、電源、パスコン、などを確認。
端子の配線を間違っている場合には、信号は全く出力されない。
・CS8412のピン11に美しい方形波(0/5v)で44100Hzを確認。
不安定、または信号なしの場合、すぐに電源を切り、CS8412の電源(0v/+5vの両方)、
タイミング回路周辺(ピン20周辺)を確認。
周波数測定機能のついたテスターのみの場合、ピン11に44100Hzを確認。
CDプレーヤーの電源を切ると、信号の消失を確認。
・CS8412のピン26は意味不明のパルス列しか見えないはず。ワードクロックをオッシロスコープの同期入力へ入れて、
ピン26を観測すると、パルス列と音の間にある程度の関連があることが見える。CDを再生などして確認。
・各部品が異常に発熱していないこと。
☆A-DAT to APDIF 変換部分の解説とチェックメニュー
○A-DATコンポジット信号には8つのトラック(4つのステレオトラック)が含まれているので、それを1つのSPDIFステレオトラックに変換することはできない。4つのステレオトラックから必要なチャンネルを一つ選ばなければならない。(あるいは4つのSPDIFインターフェースへ送り、4つの出力を得なければならない)
この作例ではその選択をC-MOSスイッチの4066で行っている。コントロールは同じく4017で。4017のCLK端子のスイッチをPUSH ONする毎に1/2→3/4→5/6→7/8→1/2と、切り替わっていく4017自体は10ステップのカウンターだが、ピン10(Q4)からリセットがかかるように配線し4ステップを得ている。
もう少し定番のセレクタ回路がありそうなものだが、手持ちの在庫部品の都合と、ユニバーサルな3ステートバスに拡張する余地を残すため4066による切り替えとした。
このようなロジックが面倒な場合は、1回路4接点のメカニカルスイッチの採用もやぶさかではない。
○クロックなのだが、SPDIF出力用のインターフェースにCS8402Aを使用しているが、
このチップは同期したWCLK(ワードクロック:X1倍周波数)、BCK(ビット転送クロック:X64)、
MCK(メインカウンタ・クロック:X128)の3種のクロックが必要である。(CS8402AはPLLを内蔵しないため)幸いなことにAL1402は PLLを内蔵し、WCLK、BCKは必要な条件を満たしている。しかしAL1402のMCKはワードクロックの256倍で、適合しない。
そのため74AC74というフリップフロップを1段使用し256倍から128倍への変換を行っている。複雑になりついでに、
A-DATオプティカル入力に伝送エラーが検出されたときに、SPDIFの出力も停止するように74AC00でロジックを組んでいる。
○チェックメニュー
○電源系、0Vまわり(電源を入れずにテスターの導通モードなどで
0Vに接続されているピン端子
・TORX176のピン2、4、ボディー
・AL1402のピン1、2、4、5、22
・74AC00のピン7、12、13
・74AC74のピン2、3、7
・CS8402Aのピン4、11、14、18、22、23、24
・4066のピン7
・4017のピン8、13
・TOTX176のピン1とボディー
注)TOS-LINKの受信コネクタは同等品が使用可能だが、受信帯域がDC~でないものはA-DAT受信には使用できないので注意。
+5v電源端子に接続される端子
・TORX176のピン3ただしインダクタ経由
・AL1402のピン3、23、24
・74AC00のピン14
・74AC74のピン1、4、10、13、14
・CS8402Aのピン1、2、3、12、13、19、21
・4066のピン14
・4017のピン16
・TOTX176のピン3
○0vと5vがショートしていないことを確認
○上記が確認できたら、通電し、0v、+5vが正常に印加されていることを確認。
隣接端子にテスターリードなどでショートしないように注意
○信号の確認
信号の確認には最低でも20MHz程度のオッシロスコープなどが必要!
周波数測定機能のついたテスターしかない場合についても記述
☆電源を投入し、A-DAT入力に信号を加え、(先にSPDIF to A-DAT部分が完成している場合はその出力を加えても可能)
・TORX176のピン1に何やら同期の取れないパルス列があることを確認。
(ビットレートが計れる場合は、およそ10Mbps程度)
無い場合には、TORX176の周辺や、電源、パスコン、などを確認。
端子を間違っている場合には、信号は全く出力されない。
・AL1402のピン8に美しい方形波(0/5v)で44100Hz(または48KHz)を確認。
不安定、または信号なしの場合、すぐに電源を切り、AL1402の電源(0v/+5vの両方)などを確認。
周波数測定機能のついたテスターのみの場合、ピン8に44100Hzを確認。
CDプレーヤーの電源を切ると、信号の消失を確認。
・AL1402のピン10、11、12、13は意味不明のパルス列しか見えないはず。
ワードクロックをオッシロスコープの同期入力へ入れて、観測すると、
パルス列と音の間にある程度の関連があることが見える。
CDを再生などして確認。
・4066の制御入力端子ピン5、6、12、13の選ばれた一つにのみ+5vが現れ、切り替えると順に切り替わる。
また、対応したLEDが光る。
*デジトラは10K/10Kの汎用。入手できない場合は2SC1815などに10KΩを取り付けたもので可。
*メカニカルスイッチの場合、このチェックは不要。
・CS8402Aのピン20、17に同期の取れないパルス列(2~3Mbps程度)のSPDIF信号が出力されていることを確認。
当然TOTX176の光出力は光っているはずだが、A-DAT信号が入力されていないときには光らない。
・各部品が異常に発熱していないこと。
○リセット回路
回路図中央に示したリセット回路は必要です。10μF16Vはタンタルコンデンサ指定です。
○使い方
・とくにHD24から出力し、CDライターに信号を送る場合など(本来の開発目的)には操作上の注意がいくつかある。(CDライターとしてはTASCAMブランドCDRW-700、CDRW-402を想定)
★HD24で44.1KHzサンプリングの信号を再生し、本機でフォーマット変換し、CDRW-700のデジタルダイレクトモードでCD-Rへ書き込みを行おうとすると「NOT 44.1KHz」エラーが出て、書き込みができないという問題があるが、CDRW-700のデジタルダイレクトモードのサンプリング許容範囲は44.1KHz±100ppmで、これを超えるサンプリング周波数のときにこの「NOT 44.1KHzエラーが出る。つまり、HD24の44.1KHzは内部設計の都合上正確な44.1KHzならないことが原因。
これを回避するには
・HD24のword clock入力へ正確な44.1KHzのクロックを与え、前面パネルのWord clock sourceを「ext」に切り替える、
または、
・SPDIF to A-DAT部分に100ppm以内の精度のCDプレーヤーなどを接続し、そのA-DAT出力をHD24のオプティカル入力に
接続し、Word clock sourceをopticalに切り替えることで正常に伝送できるようになる。
☆HD24は完全なストリーミング録音再生するマシンなので、様々なソースを(CDなどの)一旦HD24にコピーし再生してみよう。様々な発見があるはずだ。とくにDATや、MD、旧タイプの16ビット・ハードディスクレコーダーで録音されたものを、本機で変換しHD24で再生すると、本来それらが持っていた情報量をいかんなく引き出すことができるだろう。
○オプション回路解説
○オプション回路ではないのだが、図面左下に東芝TC9271FをSPDIF出力インターフェースとする場合の回路図を示す。
このチップには相当にお世話になりました。何せ2回路入りなもので。
○図面下部中央は、CS8412、AL1402が受信したSPDIF、A-DATそれぞれのコンポジット信号からワードクロックを切り出し、
出力するためのオプションである。位相タイミングはそれぞれのチップのデータシートを参照。
回路図にあるようにトランスは入っていないので、0V/+5V、デューティー比50%の信号。
○右隣下は使用しないロジックの入力処理図
○回路図右下はオプションのDAコンバータ。本機に入力された信号をモニターできるが、高品位再生できる。
ただしこの回路を追加すると、電源に±12Vを用意しなければならなくなる。(この回路以外は+5V単一電源動作)
○回路図右上はSPDIF to A-DAT、A-DAT to SPDIF回路それぞれが受信した信号に対して、
インターフェースチップがPLLロックインしたことを示す、ステータス表示。オプティカルケーブルに問題があったり、
コネクタが半差しであった場合、長すぎるケーブルなどでは、このインジケータは消灯。
LEDは青色で、ぜひとも装備したい回路だ。簡単なホールドを持つため、一瞬のみのエラーでもシビアに表示する。
○回路図右中央はCS8412に装備されている、V-frag(CDプレーヤやDATなどが完全にエラー補正できなかったことの履歴・・
1サンプル毎に添付)を分離出力する機能があるが、この信号、エラーが続いている間は「1」になりっぱなしでカウントする
ことができない。
そこで、ワードクロックからワンショットで、連続した「1」をワードクロックのタイミングで、断続する回路。
CS8412を用いたエラーカウンタの定石。
カウントするにはこの出力を、ハードカウンタへ入力する。
筆者はこのような用途に万歩計のカウンタが使用できないものかと、あれこれ改造してみたが、遅すぎてどうにも使えなかった。
(ガイガーカウンタなどでは問題なく使えるのだが)かつては秋月通商のキットと言えばカウンタだったものなのだが・・今はPICか。
*ちなみにCDRW-700などのCDライターの再生出力にはV-fragは含まれません。
V-fragは通常、停止状態、一時停止状態、早送り巻き戻し状態など、正常再生以外のときには常に出力されています。
☆電源は+5V/0V、0.5A程度の安定で低雑音のものを用意してください。
☆ケースは作例ではLANのハブの商品見本の鉄製ケースに収めているが、必ず金属製のケース(できれば鉄系)に収め、ボディーにしっかりグランド接続を行う。作例ではオプティカル入出力のみだが、同軸入出力を装備する場合、必ずパルストランスを用い、同軸(RCA PIN)のアースとケースボディーを絶縁する。おそらくオプティカルのみのほうがトラブルが少ないと思う。
ケースに金属の物を用いるのは、もちろんシールドのためで、本体からの不要輻射、外部からのノイズの侵入を抑制するためだ。
意外とオプティカル入力部分とインターフェースチップ間がシビアです。
☆謝辞
回路図ドローツールに水魚堂氏作、Bsch3Vを、画像変換ツールにIrfan Skiljan氏作、Irfan viewを使用させていただきました。
また回路図データとして、.gif形式とともにBsch3v形式のファイルを同梱しています。Bsch3vをダウンロードすれば、私の図面のオリジナル素子キャラクタをパーツとして利用できます。
*本機で使用しているA-DATインターフェースチップ、AL1401AとAL1402をセットで読者プレゼントします。詳しくは当サイト、インフォメーションを参照下さい。