DP-5V「ナデージア」がやってきた!


2011_07_27 (C)Y.Utsunomia

 レントゲン・メーター(ドジメーター、ガイガー・メーター、ガイガーカウンター、放射線量計・・etc,)の名称のある、軍用放射線量計を購入した。価格は84USドルで、送料を入れても1万円でお釣がありそうな、しかも新品未使用(おそらく役所か、軍隊に配備されていたものの払い下げと思われる)で、欠品なしなので、とにかく何か一台欲しい、あるいは旧ソビエト軍マニア、基本に忠実な構造のガイガーカウンターが欲しい方、MCAで核種分析を行ってみたい方には、大変お勧めの1台です。
 また、大変入射線量の幅が広く、これから燃料棒の破片を探したり、建屋に突入するのにも耐えられそうな「測定最大線量=200R/h(2Sv/h)」「最大加速度100G」を誇る心強い1台です。

 難点は、重量が3.2Kgと重く、また通常のバックグラウンド(0.1μSv/h)が表示目盛り最小を下回るため、平和な日常では活躍の場が少ないことなどでしょう。

 しかし、外部にカウンターユニットを取り付けることで、いわゆるカウンター表示が可能ですし、プローブそのもののつくりが大変しっかりしているので、時間はかかりますが低線量であっても抜群の安定性で測定できます。
(もちろんその場合でも、ポアソン過程由来のノイズの影響は避けられません)

 ナデージアという名前は、私が高度認識(愛情を持って)を行うため、ロシア人女性名一覧から「真実」の意を持つ名を選び、命名した。私のまわりの者たちはナターシアの方が良いというのだが、ナターシアはナデージアの妹です。(と思っていたら、ナデージアの直系の妹はプリピャチのようで、ナターシアは異母姉妹でした・・・)
それはさておき、写真は送られてきたものの一式です。

写真1:all

A:本体+プローブ
B:車両用バッテリーから給電するためのアダプタ
C:プローブ延長棒
D:予備のプローブ・ラバーパッキンと、メーター照明豆球
E:ヘッドホン(サーチ用)
F:プローブ防汚用のポリエチレンカバー(10枚)

写真2:books

 付属のマニュアル。連邦崩壊、冷戦終結後に、ロシアは外貨獲得のために、多くの準軍需品を輸出している。ガイガーカウンターもそのひとつで、Viscomという商社名称で、公式に西側に輸出売却していた。そのときのマニュアルが現在も流通しており、購入時にメールで送られてきたものが英語版マニュアル。
 もちろん製造時に付属していたマニュアルもあり、当然ロシア語。さっぱりわからない。マニュアル以外に、整備帳も付属しているが、製造番号が合わないので、別のセットのものかもしれない。整備帳には製造出荷時と思われる成績表、配備された後の校正データなどが手書きで記載されているが、もちろん読めない。

写真3:out line


写真4:out line 2


 諸元は「DP-5Vがやってきた」に掲載しているので、そちらを参照いただくとして、本稿では使い勝手や装置としての工夫や、気付いた点などについて触れてみたい。

写真5:front panel



写真6
:quick chart

*翻訳していただきました。まず右側から
 「注意点!まず、機器を使う際には使用説明書を読み(計測の)技術的訓練を受けて使用して下さい・・・」

 左側は順に
 「汚染レベル対象 MP/h(mR/h) 仕様レンジ、
 被覆された対象(不明)(不明)
 食料品、袋、台所用品、備品、厨房機器など肉、きのこ類、丸ごとの肉、水/バケツ|パン/一斤|生魚/1kg 、
 25×25cm |穀物製品、ジャム類、水/やかん」

 なのだそうです。ホントにそのレンジで大丈夫なのでしょうか?

 設計そのものはおそらくは1970年代で、部品の系列や使用方法の考え方、セットされている付属品で、それが伺える。使用されている部品の系列を見ると、半導体を極力廃し、それまでの実績のある放電管やメカニカルな部品そのもの特性によって、目的を遂げようとしている。実際に内部や動作状態を調査してみると、表示線量や外部出力は入射した放射線の実効エネルギーを正しく反映する「エネルギー補正」されたものなのだが、ガイガー管そのものにはガイガーモード定格の400vが印加されており、如何にしてこの電圧で比例計数状態できるのか、解析中です(比例計数モードでは検出率そのものが低下してしまうのに、DP-5Vではそのリスク無く、高検出率のまま比例計数していることは非常に高度な技術といえます)

 設定されている目的は、兵士にとって危険な汚染状況の把握である放射線量そのものの測定と、汚染された物体の探知で、積算線量や定点での線量測定についてはあまり考慮されていないようだ。

 操作を行う人員は、この目的のために専門の訓練を受けた者を専従で使用するようで、この線量計を装備すると、他の作業は大変行いにくくなる。おおよそ使用は、Cの棒の先端にプローブを取り付け、地面をなめるように測定していくようだが、棒に取り付けたプローブはかなり重く、私の体力では1時間程度でイヤになってしまう重さだ。

○電源
 詳しくは「DP-5Vがやってきた」を参照下さい。
 使用する電池はソビエト規格の「A336」で、単三電池をひとまわり大きくしたサイズである。

写真7:battery


写真8
:battery box

 A336は入手もしづらいので、変換アダプタをつくるとよい。絶縁物材料のパイプに、アルミフォイルを丸めた「下駄」を入れたものなら、手近のものですぐに作れるだろう。私はコンクリート埋設樹脂管(CD管)を使ったが、少し太すぎたようだ。加熱し、少し細くしてちょうどよいサイズになった。厚紙を巻いて筒状にしたもので、十分なようだ。
 くれぐれも、絶縁パイプを使用せず、アルミフォイルのみで寸法を合わさないように。内部でアルミフォイルがはずれ、ショートし、電池の爆発や漏液の原因となります。

 消費電流は20~50mAと小さく、単三型エネループ2本で、連続30時間から80時間使用できる。電池電圧が変動しても、測定結果に影響を及ぼさないように内部で安定化されていて、2本の電池の電圧が消耗して、それぞれ0.7Vまで低下しても、正常に動作できるようです(▲モードの指示値は低下・・メーターが振れていれば、規定のところまで振れていなくても、高電圧は380vは確保されています)。

 反面、過剰電圧に対する保護は無いようなので、外部電源で使用する場合でも、3.5Vを超えないように注意します。

 *この電池ボックスの接触不良は起こりやすい故障のひとつで、それは、このボックスの構造自体に原因があります。電池と接触する電極は、ボディーにリベットで固定されているが、このリベットと電極は異種金属であり、またボディーもプラスティックスであることから、その接触部分に緩みや腐食が見られ、振動やスイッチの切り替えで、メーターの振れが変化したり、ランプの明るさが変化したりするようになる。(処置についてはリペアー編を参照)

 車両用バッテリーから給電するためのアダプターが付属しているが、単純に抵抗で分圧して、およそ3V得ているだけである。車両用バッテリーへの接続口だが、バッテリーの端子に直接接続するように、丸い管状のネジ止め端子になっている。

写真9:BG

 *比較的起きやすい故障として、「高電圧発生回路の起動不良」があります。
スイッチを▲モードに切り替えるとメーターは1~2秒後に規定のところまで振れるはずなのですが、電池残量が正常であるにもかかわらず、いつまでたっても針が振れない状態です。高電圧は適切な電圧まで立ち上がらず、数十ボルト程度しか発生していません。この状態では正常に動作できませんので、リペアー編を参照下さい。

○使い方(勝手な独自推論です)
 ★起動確認(バッテリーチェック、高電圧チェック)
 起動時に、バッテリーの状態や、高電圧が正常に発生しているかを確認するモード。
 (上記の故障についての記述を参照)

写真10:meter + range sw

 ▲印のスイッチ位置がこれで、スイッチを○から▲に切り替えると、1~2秒後にメーターが振れる。針の位置が正常範囲に入っていれば、使用可能であることを示している。(詳細な解説は「DP-5Vがやってきた」を参照)

写真11:HV check mode

 ★サーチモード
 高線量の物体などがあちこちに散らばっていたり、点在するホットスポットをすばやく見つけ出すためのモード。

写真12:serch 1       写真13:DP-5V本体
  


☆レンジ切り替え:X0.1  プローブ:"β" 出力:ヘッドホン
 メーターは補助的にしか使用せず、もっぱらヘッドホンからの音(パツパツ音)に集中し、核物質の検索を行う。
 メーターの反応は遅く、聴覚のレスポンスは速い。実際に音できこえるものの多くはγ線とβ線であるが、戦場や原子炉事故で、α線核種のみが純粋に存在することは稀で、多くの場合は様々な核種が混在してころがっている。
これをいち早く見出すには、β線をたよりに検索することが有効で、その状態に特化したのがこのモードと思われる。また戦場ではいちいちメーターを見てはいられない。
レンジ切り替えを行うと、高線量レンジになるほど音量が下がるが、これは現在のレンジが何であるかを使用者に伝える役目もあるようだ。ちなみに音量調整は無い。 

 メーターを見ている場合、線量に比例してメーター指示値も上がるが、β線も検出しているため、目安の数値にしかならない。  

★放射線量測定モード
サーチモードで見出した核物質の線量を、数値化するためのモード。
☆レンジ切り替え:各レンジ  プローブ:γ 出力:メーター
 ヘッドホンは補助的にしか使用せず、主にメーターの表示を利用する。
そのまま、棒の先にプローブを付けて測定したのでは、線源との距離が不安定であるため、メーターの読みも安定しない。プローブの測定窓の両側に「脚」が付いていることから、プローブを「置いて」、あるいはプローブを密着させて使用すると思われる。
 β線と同時に測定すると、数値が大きく出てしまうので、プローブのモード切り替えを「γ」にして、β線を遮断した状態で測定する。

 測定には一定の入射線量の積分が必要なので、一定時間、測定を持続安定しなければならないが、DP-5Vの場合、45秒に設定されている。45秒間、被測定物を指定距離(脚の高さ)で測定したときに、正しい値が得られる。

○メーター読み取り精度を向上する工夫と思われるポイント
 ナデージアを最初に見たときに、何とも読みにくい「奥まったメーター」だと感じたが、使用するうちに判ったことがある。
 針式のメーターを読み取る場合、必ず正面から読み取らなければ正確な読み取りにはならない。我々が見慣れたメーターでは、文字盤の一部に鏡がセットしてあり、メーターの針と鏡に写った針が重なるように見ることになっている。

写真14:mirror 1
 
写真15:mirror 2

 要は正面から見ればよいのだが、ナデージアのメーターは表のガラスから2cm以上も奥まったところに位置し、デザイン上のある種の違和感があった。写真を撮影していて気付いたが、ナデージアの場合、メーターの上淵のアイシャドーがきれいに帯状に見えているときが正しい読み取りになる、アイシャドーが見えるように奥まっているらしいのだ。

写真16:eye shadow

 考えてみれば、戦場でのんきにミラーなんか見ている余裕はあろうはずも無い。かすむ目で、朦朧とする意識の中で読み取りができなければならないのである。また衝撃や落下物から、大切なメーターを保護しなければならない。すばらしいアイディアなのかもしれない。
 このメーターの正しい配置は、首から本機を下げた状態で、ベルト2本で体に固定されるが、正しい読み位置を得るには、このような方法しか無いのかもしれない。

★セルフ・キャリブレーション(動作チェックモード)
 原子炉事故がなくても、放射線量計を使用しフィールドワークしていると、しばしば予想とは異なる観測結果や異常な事態に遭遇することがある。また、核物質(無許可で合法的に使用できる強さの放射能であり、「ただちに健康に影響のある」強さのものではないが)で遊んでいると、人により「汚染防護」に対する認識の違いは大きく、気付いたときにはあたり一面汚染されまくっていて顔面蒼白のこともある。かつては専門教育コースでは、入門間もないころに思い知らされるように配慮されていたが、近年はヌルイようだ。
 そんなときにBGをもとめても、あたり一面どこにも正常BGは無く、状況に気付いたときには、「何が正しい状態なのか」「測定器は正常に動作しているのか」さえも判断できなくなっていることがある。
 それが「ただちに健康に・・・」であることがわかっていても、精神的に動揺し(動揺することそのものは正常な精神状態)、どのように筋道をたてて対処すればよいのかわからないほど混乱することがよくある(現在のわが国の状況そのもののような・・・)。

写真17:K mode

 このような場合に役に立つのが、キャリブレーションモードで、プローブの回転シャッター"K"のモードである。
 回転シャッターをKに切り替えると、シャッターの一部にβ線源がセットしてあり、この線源がガイガーミュラー管の前方に露出するようになっている。外部から強いγ線が入射している場合には数値が高めに偏移するかもしれないが、外部からのβ線はシャッターで遮られるので、影響を受けない。
 強度(メーター読み)はおよそ14mR/h(DP-5Vの各個体によりばらつきがある・・・DP-5Vでのメーター読み)で、その個体の数値を把握しておけば、いざというときに不信からの脱出に役立つ。

*追記 海外のDP-5V研究レポートを読んでいると、キャリブレーション線源について、ストロンチウム90/イットリウム90(半減期28.78年β崩壊)との記述がある。そんなものが少量とはいえ付属していることは貴重と言える。取り外して穿り返さないように注意!!

 測定レンジはX10、X100。X1、X0.1では振り切れてしまう。「振り切れる」ということがチェックのひとつで、振り切れなければ表示が低い方向に偏移していて「信用できない」状態であることを示している。
 付属の線源がこの線量になっているのは、低線量3レンジと高線量3レンジでガイガーミュラー管が異なり、その両方について確認を行うためで、有効に機能させるためには、正常時の数値読みを把握(本体に油性ペンで書き込んでおくくらいでちょうどよい。

 メーターリセットボタンは、このような振り切れた状態が本当に振り切れているのか、を確認するために特に有効で、振り切れている場合、メーターリセットボタンをポンと(押さえて後、すぐに指を離す)押さえて、やはり45秒以内に振り切るなら、本当に振り切れていることが確認できる。

 また、X10ではメーター中央付近にまで振れるはずだが、X0.1やX1からX10に切り替えると、しばらくの間針は振り切れっぱなしになっている。場合によっては(キャリブレーションで、X0.1→X10に切り替えた場合など)正しい表示に安定するのに45秒以上(数分)かかる場合もあり、とくにレンジをあげた場合(レンジを切り替えたときには必ず・・・の方がよかろう)、メーターリセットボタンを押す方が、表示安定までの時間が一定化するので、習慣的にこのボタンを利用する方がよさそうだ。
 この理由は、メーターが表示する電圧源はC6(積分コンデンサ)の両端に現れる電圧であるが、このコンデンサにはメーターが表示できる電圧範囲の何倍もの電圧が積分され、レンジを適正化しても、C6の電荷が安定する(放電する)には、電荷におよそ比例した時間がかかるためである。
メーターリセットボタンを押すことで、C6積分コンデンサの電荷を強制的に放電することで、リセットを実現している。

 メーター文字盤とレンジ切り替えスイッチ文字盤は、蓄光顔料を含み、光をあてておくと暗がりでもしばらくの間、緑色に燐光している。シンチレーションとは区別する場合が多いが、同様にⅩ線や紫外光でも強く光るので、γ線がある場合にも発光すると思われる。しかし、付属のβ線源では、肉眼観察では全く発光しなかった。ルミノーバ(国産の強い燐光顔料)でも同様。
 強いγ線環境下では、この文字盤が発光して危険(まさに!)を知らせるのかもしれないが、確認はできなかった。

写真18:lumi

 ★改良のヒント
 「DP-5Vがやってきた」でも触れているが、C6積分コンデンサは、ガイガー管に次ぐ要の部品で、見たことも無い形をしている。このコンデンサには得られた計数情報のすべてが積分されているわけで、その範囲はメーターの表示範囲の10倍以上にも及んでいる(リニアリティーについては未検証)。その情報が内蔵のメーターだけでは取り出せないことは歯がゆく、何とかしてみたい。
 メーターのインピーダンスが放電側の定数になっているので、これはそのままに、高インピーダンス入力のバッファー(MOS-OPampのユニティーゲインアンプなど)でC6の電圧を受け、AD変換したり、対数圧縮し広範囲表示を表示したりできそうだ。
 もとが複雑な回路では様々なノイズが含まれていて、このような改良は実質的に困難であったりするが、DP-5Vでは単純な0Vからの積分コンデンサなので、さまざまな改良余地がある。
問題は電源をどのように確保するかだ。 

○プローブ
 プローブはDP-5Vの構成要素の中でも、最も魅力的な部分の一つだ。現在主流の小型のガイガーカウンターの多くは、機動性を確保するためにシールドやフレームが虚弱になり、基本的なS/N比や線種の分離性能などが犠牲になっているものが多い。DP-5Vでは基本に忠実で、電源部と測定部の分離、プローブの電気・磁気的シールド、線種(γ線/β線)の分離(β遮断)など、シンプルでかつ妥協のないつくりになっている。自作する場合の大変よい見本となる。

写真19:probe 1


写真20:probe 2


写真21:probe 3


写真22:probe 4


写真23:probe 5


写真24:probe 6


写真25:probe 7


写真26:probe 8


○メンテナンス
 ボディーの開き方は、電池を抜き、
 1)レンジ切り替えノブを、イモネジをゆるめ、取り外し(組み付け時注意)、
 2)底部のボルト(ISO互換 M4X15mm)4本を抜き、
 3)本体上部を慎重に上に引き上げる。

 ロシア製の製品にはしばしば見られるが、ネジ穴に粘土状のものが詰め込まれ封止し、なにやらスタンプがその粘土に押されている。
これは、分解の有無を調べるためのもので、それ以外に意味はない(開いたものは保障の対象外になるのだろう)ので、遠慮なく粘土を破棄する。
 旧ソビエトはメートル法準拠であるため、日本のネジとの互換性は高い。
しかし、ネジ頭がスリワリ(マイナス)のことが多く、頻繁な開け閉めでは能率がよくない。もしも頻繁に開け閉めするのであれば、互換性のあるフィリップス頭(いわゆるプラスネジ)やキャップスクリュー(六角穴つき)に交換しておくと扱いが楽になる。

写真27:封止


写真28:封止2


写真29:open way


写真30
:PCB 2


写真31:PCB sol

 分解はできるだけホコリの少ない、湿度の少ない環境で行う。最近のデジタル機材と異なり、多くの銀接点スイッチが使用されているので、亜硫酸ガスや硫化水素ガスのある、温泉や火山地帯での分解は避ける。
 メーター窓や外側メーター窓はガラスなので、とくに内側はメガネの曇り止めなどを、組み立て前に薄く塗布しておく。
 メーター照明用電球はわりと接触不良になるので、分解時には、ゆるめて→しめる、を実施。

写真32:inside 1

 メンテナンスや調整はボディーカバーを外し、メイン基板を倒した状態で行う。

写真33:inside 2


写真34:inside 3


 ボディーカバーを外すと、ずらりと調整箇所が並んでいるが、どれも慎重を要するものばかりで、十分な調整環境が無い状態では手出しをしない方がよいだろう。
 主要な調整箇所は8箇所あり、各レンジの微調整が6(R20~R25)、高電圧調整が1(R16)、高電圧表示(▲)調整が1(R18)であるが、各レンジ微調整は各レンジに対応する線源あるいは、それに相当するX線パルサーが必要で、その設備のない環境では調整しない方がよいだろう。

 とりあえず初期状態を維持するためには、高電圧部分の電圧を測定し、そのときの本体メーターの振れ具合を記録しておくことが有効。電圧測定はできるだけ高抵抗のもので、使用した機種も記録しておく。電圧は強力に負帰還で安定化されているので、普通のデジタルテスターで可能である。また測定時の電池電圧と消費電流の記録も忘れずに。

○高電圧調整参考値
メイン基板の高圧コンデンサC12(0.1μF/750v)の両端(感電注意!デジタルテスター使用可能)の電圧を測り、その電圧が400v±5vになるようにR16を調整するが、電源投入後2分は待つこと。(▲モード)この電圧が2分程度待っても上昇し続けたりふらつく場合、C12が不良、基板その他に著しいリークの可能性があります。リペアー編を参照下さい。

写真35:VR

 写真では防カビ剤を入れているが、電気接点や劣化のいくつかにはカビの関与がある。DP-5Vは一応機密構造で、わが国の環境とは異なる条件で製造された装置なので、影響を受ける可能性がある。どれくらいの効果があるかは不明であるが、予防的処置として内部にセットしてみた。

 まだ使い始めて間もないため、どのようなクセがあるのかよくわからないが、何度か分解と組立を繰り返すうちに、いくつか判ったことがある。組立そのものが幾分粗く、本来あるべき状態に組み立てなおすと良いようだ。
 本体も雨中で使用が可能のようであるが、その防水性を確保するのに、いくつかのパッキンやガスケットが使われている。メーターライトスイッチ、メーターリセットボタン、レンジ切り替えスイッチシャフト部分、本体ボディーカバーのあわせ部分、プローブ組立などであるが、ナデージアではレンジ切り替えスイッチ部分のパッキンがうまく付いておらず、調整を必要とした。
 シャフトはゴムのパッキンの中央を通るはずであるが、幾分ゆがんでおり、中央を通っていなかったため、パッキンのリップがめくれていたが、本体シャーシのスイッチ取り付けリングナットをゆるめ、正しい位置に固定することでスイッチ操作も軽くなり、リップのめくれも解消できた。どうやらシャーシの取り付け穴の一番奥よりも少し手前で、ジャストになるようだ。

 今後も気付いた点があれば、増補していきます。

 組み付け時に注意することは、メーターランプスイッチのノブが、ラバーカバーにうまく収まっているか確認しながら、ボディーカバーを閉じることと、レンジ切り替えスイッチノブを正しい深さで取り付けないと、ガタが大きくなること。写真参照。

写真36:knob 1


写真37:knob 2


 ボディーカバーは4点のネジ止めであるが、ネジを締める前にパッキンとのアタリを見ながら正しい位置を探り、ネジも4点をローテーションしながら少しずつ閉めこんでいかなければならないようだ。