☆LED懐中電灯のメンテナンス
上記の表に記したような、高出力LED懐中電灯が本来持っている性能を発揮するには、定期的なメンテナンスだけではなく、購入後すぐに実施した方が良い手入れもある。
1)電気接続の維持
2)スイッチ動作
3)放熱機能
4)光学系
5)防水性(防水性のある機種について)
以上のような項目がある
高出力LED懐中電灯(とくに中国製造の製品)を購入したら、そのまま実使用投入す
る前に、一度分解し、機構を観察し、妥当な設計や組み立てになっているかを点検し
た方がよいだろう。これを怠ると、光出力で10~30%以上のロスをしているかもしれ
ない。
☆1)電気的接続
当たり前のことだが、接触不良があると、その部分で電流や電圧の損失=発熱が生じ、明るさをや持続時間、信頼性などを損なう。1.2V~3.6V、2Aもの低電圧・大電流を扱うので、わずかな接触不良であっても損失は大きい。
回路は電池+極→チャージポンプ→ボディー→ボディー接続部→スイッチ→電池-極・・・これらはすべて接触で接続されている。チャージポンプ2次側はすべてハンダ付けされていることが多い。
金属の表面は例外なく酸化膜に覆われていて、上記の接触部分の多くは大なり小なり酸化膜越しに電流が流れている。そのため少なからずロスが生じ、とくに使い込むに従い、そのロスは増大する傾向がある。
懐中電灯を振ったり、衝撃を与えたり(適切に)したときに明るさが変動する場合、接触状態が悪化していると考えるべきだろう。
○メンテナンス
防水性の項目でも触れるが、酸化膜を進行させないためには、金属表面を適切に油膜で覆い、空気中の酸素に触れないようにする事が効果的だ。とくにボディーとの接続部分、組み立て部分、電池電極部分などがこれにあたる。
グリースを塗布する前に、これらの接触部分が深刻な錆や異物に汚染されていないことを目視で確認する。錆や異物が認められる場合は、機械的に(サンドペーパーやコンパウンド、刃先などで)削り落とす。正常な酸化膜は目には見えない。
サンドペーパーの削り粉やコンパウンド、はがれた異物などを徹底的にふき取り、本来接触するべき相手と擦り合わせる。擦り合わせ後にさらにふき取り、その後に電気接点に使用できるグリースを薄く塗布し、さらに擦り合せ、組み付ける。電池電極部分は、懐中電灯に入れる前に、毎回、デニム生地やマイクロファイバークリーニングクロス(メガネ用)などで擦ってから投入する。
使用するグリースはタミヤ製接点グリース(模型店で購入可能)か、釣具店で販売されている釣りのリール用グリースが良好なようだ。オイル(グリス)ふき取りと塗布作業は定期的に行う。
○改造
懐中電灯の、電池+側が接触する部分は、チャージポンププリント基板の裏面で、金メッキされたプリントパターンのことがよくある。金は金属中最も酸素との結合が弱く、電池の接触圧力程度でも酸素分子は排除されるはずだが、2~3年使い続けられた懐中電灯のこの部分を観察すると、金は剥がれ落ち、接触が悪化しているものをよく見かける。流れている電流と持ち歩きの振動を考えると当然だが、放電の痕跡すら見受けられる。
もともと金メッキの厚さは数ミクロンしかなく、見た目が金色でも、実際には顕微鏡などで観察すると、地の銅とぶちまだらなこともよくある。10ミクロン以上もある金張りならもう少し持ちもよいのだろうが・・。
東急ハンズなどの材料屋で探せば容易に見つかるが、銀(9095以上)の薄板を用意し(厚さは0.1~0.2mm程度)、あらかじめ接触部分にハンダ付けなどで取り付けておくと非常に良好な結果が得られる。
銀は接触電極としてなじみがよく、電気抵抗が極小で、しかも酸化膜も良導体であるからだ。あくまで取り付け部分はプリント基板のランドなので、過熱しすぎないように、手早く取り付ける。
☆2)スイッチ
スイッチそのもののメンテナンスや改造は容易ではないが、スイッチノブにわずかに触れただけで明るさが不安定に変化したりする場合には、スイッチやスイッチ周辺に不良箇所があるかもしれない。
スイッチはサブ基板にハンダ付けしてあったり、ボディーとバネツッパリで接続されていたりする。これはボディーがアルミ合金製なので、ハンダ付けなどができないためだ。リングねじなどで止める形式は高級な部類だ。
どのような構造になっているかよく観察してみよう。前項の接触同様に、目に見える酸化物や異物、変色などがある場合はとりのぞき、グリース塗布すると効果がある。
ハンダ付けの場合、定期的に素早くハンダ付け直し(数年に一度)が効果がある。使ううちに、ハンダに目に見えないクラックが入っていることがよくあるからだ。
☆3)放熱
放熱がうまくできているかどうかを見極めるには、ある程度の熟練が必要だ。
LED懐中電灯で、もっとも発熱が多いのはLEDそのものだが、LEDとその受け部分が浮いていたり(つまりLEDが動く状態)、ボディーに熱が伝わっていない場合、LEDの寿命は短縮される。高出力LED懐中電灯のLED付近のボディーが熱くなるのは正常なことで、明るさのわりに発熱しないのは問題がある。
11)(UltraFire L2)は発光部分がモジュールになっていて、ボディーへの放熱がスムーズではないが、シリコンゴムなどで隙間を埋めることで、放熱を改善することができ、連続した高出力にも動作が安定するようになる。またボディーが温度上昇することで、使用者に状態を伝えることができ、適切に休憩を入れることができる。
どれくらいの明るさや電流で、どれくらいの発熱になるのか、相場を表現しにくいが、基本は冷やせば冷やすほどよい。
LEDは特殊な導熱性のパテが使用されていることがよくあるが、組み付け不良などで剥がれていたりする場合、パテを完全にとりのぞき、エポキシ系接着剤などで固定しても良好な放熱が得られる。
☆4)光学系
もっとも目視で確認しやすい部分だ。LEDを点灯してみて、ガラス窓や反射鏡、コリメータレンズに曇りがないか確認する。
注意:反射鏡やコリメータの内側には、絶対に触れてはいけません。
カメラ用品のブロアで埃を吹き飛ばすくらいがせいぜいで、一度付着した指紋などは容易には除去できず、傷が入るデメリットの方が大きいだろう。中性界面活性剤などで丸洗いするくらいしかできることはない。
ガラス(あるいはプラスティック)の窓は掃除することができる。メガネ用のクリーニングクロスにメガネ用クリーニング液をつけてふき取る。
購入した何本かのLED懐中電灯では、最初からガラス窓がひどく曇っていた。明るさで7~10%ものロスだったのでただ事ではないだろう。
☆5)防水性
防水性を維持するために、多くの製品ではOリング(オーリングと読む)が使用されているが、油切れの状態で開け閉めしていると、すぐにOリングが切れてしまう。もちろんOリングが切れてしまっては、防水性は維持できない。
これらの懐中電灯では、多くの部分にOリングが使用されているが、それらはいずれも保油する必要がある。ネット上の販売店の中には、専用のグリースをそろえているところもあるが、タミヤ製接点グリス(模型店で購入可)か、釣具のリール用のグリスが良好なようだ。Oリングが傷つく前にこの作業を行わなければ意味が無い。またうまくフィットするサイズのOリングはなかなか入手できない。
☆6)
当たり前の話だが、使用していない懐中電灯にバッテリーを入れっぱなしにしておくことは無意味なだけでなく漏液やガス発生による爆発の原因になる。バッテリーはこまめに出しておこう。
災害に対する備えの懐中電灯の場合は、エネループなどの低自己放電の保障のあるものを利用し、定期的(年一回程度)に追加充電を行う。エネループの場合もガス発生が皆無なわけではないので、電池投入口のねじ込みをOリング以前まで緩めておくことも有効だろう。
バッテリーはニッケル水素もリチウムイオンも極めて高エネルギーかつ高出力で、ショートは電池にとっても使用者にとっても致命的な事態の原因となる。単3型、単4型、18650型、いずれも専用サイズのポリプロピレン(またはポリエチレン)製のケースが販売されているので、必ずケースに入れて保管・運搬を行う。
長期使用しないリチウムイオン・バッテリーでは、電池容量60%程度まで放電または充電し、1年に1度、10~15%程度追加充電を行うと、最も長期保存できる。満充電状態は電池内圧、自己放電特性の上で好ましくないようだ。乾燥し、かつ高温にならない場所で保存する。また密閉ケースに入れてはいけない。
長期保存していたリチウムイオンバッテリーを目覚めさせる(または新品を使い始める)場合は、いきなり満充電にするのではなく、20分程度で一度充電を停止し、1~2時間程度の休憩を経て、その後に満充電まで充電すると内部電極に優しいようだ(1/2~1/4C充電として)。
また充電終了時間を予想し、予想時間を大幅に超えても充電が終了せず、しかも電池の発熱を伴う場合は、直ちに中止し、2~3度充放電を繰り返し様子をみる。また自動充電停止機能は過信すべきではない!(ニッケル水素の場合も同様)
☆7)アクセサリー
参考写真にもあるが、ヘッドバンドやハンドストラップ、(場合によってはネックストラップ)も、有用な機能拡張のためのアクセサリーです。今日の身の回りにある各種の情報機器や便利な小物、とりわけ携帯電話やデジカメ(TM)などは現代を代表する精密機器です。
説教くさいですが、これらの精密機械の中身を知ってか知らずしてか、粗雑に扱われている場面をしばしば目にする。コンクリートの床に
落下(もちろん故意にではあるまいが)させたり、不要に開閉させたりなど。
とくに落下は致命的で、内蔵されているバッテリーなどを考えると恐ろしい限りだ。小型の懐中電灯もそれらほどの精密さは無いものの、落下などの衝撃はできるだけ避けねばならない。
もっとも簡単な対策は、ハンドストラップ(もともと附属していることが多い)や、ネックストラップを取り付け、それらに腕や首を通し、落下を防ぐことだろう。ストラップが付いているだけではだめだ。手首や首に掛けなければ何の意味も無い。小型軽量のカラビナなどを併用するのも良いだろう。
参考写真にもいくつか写っているが、ハンドストラップにアジャスト用のシリコンパイプを通しておくと、さらに手首から外れにくくなる。
ヘッドバンドを嫌う方は多いが、いざというときに「両手が空いている」ことは必須で、ライトのために片手がふさがっていることは大きな機能損失です。口に銜えるなんて論外です(私は年頃の女性が、舞台袖でミニマグライトを銜えながら作業をしていて転倒し、前歯4本を失うところを目にしたことがある!)。
先日、風呂場の電球が切れ、在庫も無かったので、LEDライト+近距離アダプタで急場をしのいだが、もしハンドストラップが付いてなかったら、どこかに吊り下げることもできないし、まして片手で持ちながら入浴なんてありえないだろう。中にはそんなときのための防水ではないか、との指摘もありそうだが、わざわざ水没のリスクは犯すべきではない。ストラップのおかげで快適に入浴できたので、この一文を追加した!