LEDライト
LEDの進化は著しく、今日では、いわゆる懐中電灯と呼ばれる分野の領域のかなりの部分は、旧来のタングステンフィラメント電球からLEDに置き換わっている。
主な理由は発光効率の高さ、光源デバイスの寿命の長さ(懐中電灯用のタングステン電球の中には10時間に満たない寿命のものも)、色温度の高さなどがある。
近年高出力の白色LEDが活況で、それを用いた製品も豊富にに市場に出回っている。同じように見える高出力白色LEDも製造会社によりその性能は様々で、同じ電力を消費していても発光出力には相当の差がある。
近年までの私の楽しみの一つは、やはり自作なのだが、適当なボディー(これは製品の流用が楽で見栄えが良い)にオリジナルのチャージポンプ(DC-DCコンバータ)、高能率のLEDに換装し、差別化された性能をひそかに楽しむことであったが、安価な中国製の製品が、最初から高能率LEDを搭載し、そこそこの価格で販売されるに至り、その楽しみも終わったかに見えた。
ところが、それらの製品を買いあさり、様々な観点から評価してみると、意外な傾向と性能が見え隠れし、私のささやかな楽しみは当分続きそうであることもわかった。また上記のマントルランタンの領域を脅かすほどの高出力LED製品は、当分出現しそうにないことも。
工学系の方には今更なことと思うが、一般にはLEDの性質は意外と知られていないもので、ましてチャージポンプやバッテリーについても含めると、おさらいしておいた方が良いのではないかと思う。なぜなら、単なる発光器具というより、現代を代表する「火気」に近いものがあり、取り扱いや性質の無理解はそれなりに危険で、場合によっては命を落とすほどだからだ。
LEDという部品
LEDはLight Emitting Diodeの略号で、その名の通り古くから用いられてきたダイオードという部品の性質をそのまま受け継いでいる。ダイオードの名の由来はラテン語の「2」を表すdiで、2つの電極を持つことの意味だ。
いわゆるダイオードでは、その2つの電極はそれぞれアノードとカソードという名称を持ち、電流はアノードからカソードへは流れるが、逆へは流れない。一方通行なのである。この特異な性質を電子回路では様々な目的に利用するが、LEDの場合はその一方通行であることには着目せず、アノードからカソードへ電流が流れるときの発光現象が利用される。
この電流の一方通行はポンプなどの弁と同様に、一定の圧力(ダイオードの場合は電圧)がかからないと開かない(電流が流れ始めない)。その電圧はダイオードの構造固有で、シリコンダイオードの場合0.7V、ショット・キ・ダイオードでは0.4Vだが、赤や緑のLEDでは2V、青や白では3Vで、その電圧に満たない場合電流はほとんど流れない(流れなければ発光もしないのだが、微弱でも流れるとその電流に応じた発光はする)。
この電圧を順方向電圧あるいは閾値と呼ぶが、この電圧以上でもオームの法則には従わず、電圧と電流は比例しない。また順方向電圧は温度によっても変化するため一定の光量を保つには、電流を監視し、一定値を保つように電圧を調整しなければならない。この問題が電球などと違い扱いの難しいところで、過剰な電流は容易にオーバーヒートや破壊の原因となる。
実際に多くの高出力LED懐中電灯では規定電流を守っておらず、壊れる寸前で使用しているものも多い(定格の3倍程度は普通かも)。逆に言えば定格を遵守し、真面目に設計したのでは市販の製品の明るさには到底及ばず、実際にそれなりの電流を流してみて、チャージポンプや周辺部品や放熱などを考えながら、ベストな組み合わせを模索するのである。従って正確な電流測定は必須で、チャージポンプの入力側、LEDへの電流の双方または片方をモニターしなければならない。