いつも状況の予測を立てながらコンテンツ原稿を書いていますが、エッセイにも書いたように3月12日の時点で、炉心溶融は推定できていた。
私は核物理について、ものすごく勉強したわけではないが、常識的な範囲内で伝わってくる状況と照らし合わせて考えると、当然の結論だったが、現状(6月10日)での同様の推定では、炉心の多くは格納容器、圧力抑制装置、建屋の床も貫通し、地面にめり込み、浸潤中と考えている。
根拠としては、地下水系からのストロンチウムなどの炉心産生物の検出があること、明確な発生熱源が地上に無いらしいことなどだが、無力な私にできることの一つがこの状態に命名することだ。
めり込んでいることから、「メリコミ (Merikomi)」というのはどうだろう。ツナミという語も国際的に使用されているが、この前人未到の事態に対して、わが国には命名権があるのではなかろうか。
メルトダウンのさらに進行した状況なのでメで始まり、恐怖を抱かせるツナミのミで終わり、語呂もよい。イタリア語風にコの部分にアクセントを置き、「メリコーミ」というのは震撼するに十分な音を持っている。
定義としては、炉心溶融物が地上および地下構造物を貫通し、手の届かないところまで達した状況を指す。原因は事故時の手立ての不足または遅延によるものを言う。
チェルノブイリの時には、落下に先回りし、トンネルを掘り、メリコーミを阻止した。フランスの最新鋭炉は、すべての冷却系がダウンした場合、メリコーミを阻止するための「炉心キャッチャー」が装備されている。
このようにメリコーミという語を用意することで、様々な状況が説明しやすくなるし、人々を不安から解放することができるかもしれない。不安とは名前が付いていないもの、理解できないものに対して発動する。一部の地域では自殺率が震災前の3倍にもなっているという。多少は思いとどまらせるのに役立つかもしれない。チャイナシンドロームよりは的を得ていると思う。
精一杯の皮肉のつもりです。今後、わが国はどのみち「メリコーミ」と付き合っていかねばならないのですから・・。
2011年6月10日 Y.Utsunomia