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タイトル :TOKUSA NO KANDAKARA 91 Pieces of C
Educational Kit 
名義 : 宇都宮 泰
出版者 : 宇都宮 泰
流通 : HÖUREN
出版コード : 無し
構成 : 全2曲/28区分

※文中、「20周年リミックス・アルバム」とありますが、2002年当時は20周年を目的として制作されました。
実際の製品は、「25周年」となっています。

1998年に英国リコメンデッド・レーベルのクリス・カトラーから10人の作家に対し、アートベアーズの20周年リミックス・アルバムへの参加要請があったが、それに応えた作品としてTOKUSA NO KANDAKARA(以下TOKUSA~)を2000年3月に制作した。

TOKUSA~自体は僅か3分にも満たない小曲であるが、そのつくりは音楽理論の根底をもゆるがすほどの仮説と実験に満ちており、リミックスの常識も打ち破る大作である。

このEducational Kit(以下、教育版)には原曲である「ON SUICIDE」が含まれ、その原曲が完成曲に至るプロセスを26段階にわたり収録、詳細な30ページの解説書とともにパッケージした究極の教材である。また部数限定の完全なプライベート版(完成曲はリミックス・アルバムで世界配給)であることから、装丁や録音メディアへの書き込みについても究極の手作りを目標とし、この点でも多方面からの高い評価が寄せられている。(筆者web上にて近日掲載予定

内容はJON&U~が聞き手の脳内に形成されるプロセッサを表現主体としているのに対して、本作では演奏者の脳機能をエフェクタの一部として積極的に使用し、聴き手に内在する美の受容器とも言える部分に直接作用することを目的としている。

また、完成曲の楽曲背景として現代の音楽価値観を採用せず、異なる仮想の文明における音楽美系列を考案。その美系列に沿いながら原曲を変形ならびに単純化し完成に導いたものである。

(宇都宮はその解説書中で美の受容器への作用や美系列といったイデア論を、独自のエントロピー論にからめて解説しているが、某評論家によればそれは新種の時間論なのだそうで、その主張をよくよく噛み締めてみると納得できる部分も多い。逆に考えてみると音楽に於いては長い間時間論が膠着していたのかもしれない。)

この教育版では手法の公開に留まらず、作者の思考の足跡を極力盛り込むように配慮した。それは本作が「音そのものによる思考」、という音楽最大の謎のひとつを解き明かすことにもつながる巨大な実験プラントでもあることを意味し、それゆえ希望に満ちた1枚であると言える。

本作は総生産数が僅か300セットの完全手作りであり追加生産できないことから、販売は困難で、どうしても必要な場合は各クラスあたり1枚に配給制限される。

尚、本作シリーズにはTOKUSA NO KANDAKARA Shadow of the C があるが、この楽曲は、先の「アートベアーズ結成20周年リミックス・アルバム」でのみ公開される。

2002年 宇都宮 泰