index

イントロダクション
 +J408γ計数管妄想  2011.6.27 更新 テキスト内に「6月24日追記」と書い

放射線量計を持つことの意味
 +簡易なカウント数からシーベルトへの換算

ガイガー/ミュラー管とは
 +外部クエンチングについて

動作させる方法

動作させるために必須なもの

注意すべきこと

☆☆☆

高圧電源とGMTプローブ   2011.6.27 テキスト・回路図 更新しました。
 +高圧電源解説テキスト   2011.6.27 アップロード
 +高電圧測定の試み

管の絶縁確保について

どこを拭き清めるのか
 +☆mini Q & A

ガイガーカウンターによる定確度計測
 +歩数計のカウント速度の向上について

定確度計測とは
 +定確度カウンター回路解説

なぜPICやAVRでカウンターを作らないのか

カウンター専用に設計されたICを使用した回路例 
 +TC5032Pを使用したカウンター回路例解説     2011.6.27 テキスト最下部 更新

番外

番外2

ガイガーミュラー管の複数接続についての考察

+ホーム標準線源の製作

ユニバーサル・カウンターの製作(ver,1.62)

ゲートパルサー(ユニバーサル・カウンターTUC162のための)の製作



イントロダクション

Utsunomia.comのブログなどでお知らせしているように、原発事故を受けて以降、手軽に製作できて実用的な放射線量計の記事を書くべく、日々試作や実験を繰り返しているのですが、宣言したとおりのシンチレーション・メータの開発に難航しており、そうこうしている間に事態はより深刻化しつつあるため、第一弾としてガイガー/ミュラー管を使用した「ガイガーカウンター」の製作記事を取り急ぎアップします。

 難航の理由は、シンチレータ(放射線の入射に対して発光する素材)の入手で、以前に比べ化学薬品の入手が規制により厳しくなっていることと、身の回り品から入手しようとすると、一定の「危険」が伴うことなどですが、徐々に抜け道を見つけつつありますので、今後に期待下さい。

 もう一つの問題は「校正」が困難なことですが、そのためにも本稿の「ガイガーカウンター」をたよりに行うことが一つの打開策になるため、是非挑戦してみてください。

 使用するガイガー/ミュラー管は旧ソビエト製の「SbM20」という軍用の金属管で、ウクライナやロシア、アメリカの通販サイトで容易に入手できます。

 

J408γ計数管妄想.txt←click


 この管を採用した理由は、プラトー電圧(管を動作させるために必要な電圧)が低く(定格で350v~475v)かつ広いこと、大量に製造されているため入手が容易で安価、クエンチング(検出の歯切れを向上させプラトー領域を拡大するための手法)に有機ガスを使用していないため長寿命である、実用的な感度(有効容積7.1cc)を有しており、複数本の並列動作で感度の向上ができて、SI単位系線量当量であるシーベルトへの簡易な換算データとその利用実績があることなどです。反面、全金属管なので、α線の検出はできません。
 
 ☆☆校正ができなければ、何の信憑性も無い、という意見がありますが、もともとガイガーカウンターは放射線の有無を定性的に識別する道具であり、また「感度」という概念も存在しません。感度に相当するものは管の有効容積と管の材質のみに影響を受け、よほど異常な回路で動作させない限り、得られるカウント数が大幅に異なることもありません。

ただ、ケースに組み込んだ場合のケース材質、放射性物質からの距離には強く依存するため、運用上、注意を要する。今回新品・中古(チェルノブイリで使用されたと思われる)のSbM20を20本調査したが、動作するかしないかに明確に判定でき、中途半端に感度が低下している個体は1例のみであった。それゆえがんばって製作し、バックグラウンドや手近な線源チェックが正常であれば、十分に実用使用できます。
自信をもって製作してください。☆☆

 参考までに、バックグラウンド(自然放射線:大地や宇宙、太陽などを起源とする荷電粒子や電磁波など)は15~25カウントと比較的高感度で、サイズが有効直径10mm×有効長91mm(有効容積7.1cc)と大きく、寿命も2×10の10乗あるため、日ごろから身に着けておき「積算被ばく線量計」として使用したり、食品の含有放射性物質の有無も短時間で判定したりすることができます。

 価格は20ドル弱から50ドル程度と幅があり、米国のキット販売会社などは比較的高価ですが、全数検査の後発送してくれるようです。旧ソビエトから直接購入した場合、安価ですが不良品などが混ざっている可能性もあり、初めて購入する場合や、1本しか必要で無い場合は避けた方が良いです。

追記:その後ウクライナから直接購入した管では、15本中8本が電流リーク(無論使用不可)3本がガス抜け(外気浸入)、使用できたのはわずか4本のみであったが、交渉の結果不良分は返金された。

 電流のリークは電解質の付着などで起こるが、おそらくウクライナでは乾燥のため正常動作していたものが、日本の多湿環境でリークするようになったのかもしれない。いずれにしても新品ではないので・・。(電解質の由来は、おそらく乾電池の漏液・・・つまりNew oldと表記されていても、日本でいうところの中古品・・・その分安いならそれもよし、あるいはエージングとも)



「放射線量計を持つことの意味・・・(必ずお読み下さい)」


 この記事を書くにあたり、数十人の人たちに意識調査を行ってみましたが、「そこまでする必要があるほど危険とは思えない」「知りたくも無い」という声が多く存在していることは事実です。しかし、地下街を歩いているときに突然停電したとして、懐中電灯の備えがあるかどうかはその後の行動を大きく左右するでしょう。それとまったく同じで、見ることができない脅威に対してそれを知るための手がかりがあれば、不測の事態を避けるのに大いに役立つでしょうし、それが文化的生活というものでしょう。

 また、原発事故が無くても、身の回りには口にしない方が良いものや、長居しない方が良い場所は結構あるものです。どれくらいが「危険なレベル」かは様々な見解がありますが、少なくとも私は年間4回全身のCTを撮影しなければならない状態で、すでにそれだけで年間被ばく許容量に達しています。できればこれ以上少しでも被ばくしたくはありません。
 このような状況は私だけではなく、医療サービスを受ける可能性のある多くの人にも潜在的に存在することで、そのためにも日ごろの被ばく線量を低くしておくことは無意味ではありません。

 しかしある日突然ガイガーカウンターを入手しても、何を目安に判断すればよいかもわからないかもしれません。とりあえずそれがどのようなものなのか、観察し記録するところからはじめなくてはならないでしょう。私が線量計を「日常装備」してすでに22年が経ちますが、私には「あること」が普通になっていますし、それで何か迷ったり悩んだり不安になったりしたことはありません。もはや懐中電灯と同じ存在です。(学生たちに問うてみると、その懐中電灯の装備すら持ち合わせず、その予定も無いとか)

シーベルトへの換算方法と定確度計測
←click



「ガイガー/ミュラー管とは」

約80年前に発明された、放電管の一種で、管の内部にはネオンやアルゴンなどの不活性ガスが減圧封入されており、放射線(放射線は電荷を持ち、通過した周辺の物質を帯電あるいは電離するため、放電管内の電極間に電気の通路が一時的に形成され、放電が起きる)が入射したときのみ小さな放電が起きるように作られている。電荷を帯びていない中性子などでは、電離が起きないためこの方法では検出できない。

 多くの放電管はネオンやアルゴンの不活性ガスが封入され、ネオンランプ、冷陰極放電管、ガス入り真空管などで代用できそうだが、これらの放電管の電極には放電を開始させるためや電子の放射を促進するために、放射性物質が組み込んであるので、検出管として使用することはできない。ストロボフラッシュ管が使用できないものか検討してみたが、恐ろしく感度が悪い(電極構造の問題)うえにプラトー電圧が数Kv と高く、またプラトー領域がほとんど無い。うわさだが、高線量の場所では、カメラのストロボが勝手に発光することもあるのだとか。おそらく死ぬほど強いガンマ線ではトリガーされてしまうのだろう。

 唯一使用できそうな管は、装飾置物の「プラズマボール」で、中心電極をうまく付け替えることができれば(これも線源を含んでいる)、結構プラトー領域は広いが、放電の歯切れが悪い(放電しっぱなしになってしまう)。外部クエンチングしなければならないのだろうか。これもいずれ試してみたい。

外部クエンチング.txtへ
←click

 電離箱も有名な手法だが、やはり動作が不安定で、実用性や機動性は低く、またプラトー電圧に10kv近くが必要。連続放電を避けるには、内部クエンチングとしてブタンガスと紙による高抵抗(矢野/米村方式)と、やはり外部クエンチングの必要があると思う(私的な追実験による)。矢野/米村方式では、内部クエンチングが弱ってくるに従い、同時に印加電圧が下がってくるため、一定時間の安定があるように推論する。












「動作させる方法」

 ガイガー/ミュラー管は2極の放電管で、直流電圧を印加しておき、その放電を検出することで放射線を「検知」できるが、大きな放電は必要ではない。なるべく微小な「歯切れの良い」放電をさせるため、高圧電源と管のアノード(ガイガー管では中心電極:プラスを印加する電極:正極・・・電池の場合は逆になるので注意)の間に数MΩ以上の高抵抗を挿入し、放電を抑制する。

 この高抵抗が無く、大電流で放電させた場合、電極の損傷やガスの劣化の原因となり、寿命を短縮するため、原則として指定されているよりも高抵抗で使用することが望ましい。高すぎる場合は、絶縁部分のリークや、ガスそのものの特性により検出率が低下することがある。

 SbM20の場合、20MΩ以上で問題なく動作するが、同じロシアのγ線専用ガラス管CI3-BGでは、10MΩ程度にしなければならないようだ。

 検出はいくつかの回路形式があるが、最も簡単で安定している方法の一つがカソード(マイナスまたは0vを接続する極)とアース間に10kΩ~100kΩの負荷抵抗を直列に挿入する方法だ。出力はこの負荷抵抗の両端に現れる電圧を増幅すればよく、SbM20の場合は増幅しなくてもそのままクリスタルイヤホン、ピエゾスピーカーやピエゾ振動子を駆動したり、74HCロジックへ入力できる。

 特殊な高感度管の場合は、アノード側の抵抗も数百MΩ、検出も1GΩ受けと、コンデンサーマイク並の周辺回路が必要。もしも巨大な高感度管を入手し、主要特性が分からない場合は、原則としてアノード側の高抵抗(バイアス抵抗)は
20MΩを基本とした方がよいだろう。管によっては外部クエンチングしないと連続放電に陥ってしまうものもあるが、その場合でも20MΩが挿入されていれば大きな損傷は免れることができるだろう。



「動作させるために必須なもの」

 高電圧電源が必要ですが、SbM20の場合は300v程度あれば実用的な感度に達し、特別な安定化も必要ではありません。

 この第一稿では、本格的な動作を行うための基礎的な実験として、使い捨てカメラ「写ルンです」のストロボフラッシュ回路を流用し、目的の電圧を得てみます。

 検出出力は、セラミック(クリスタル)イヤホンを用いて、簡略化に努めてみました。

 既に同内容の記事がいくつかアップされているので、そちらも参考にするとよいと思います。


この図面は、紙に印字してご使用下さい。



「注意すべきこと」

 カメラのストロボフラッシュは、コンデンサーに高電圧エネルギーを蓄え、シャッターとともに一気に放電管に電流を流し、閃光を得ています。このコンデンサーに蓄えられたエネルギーは結構大きく、激しく感電するのに十分なもので、不用意に触れ、触れ方が悪いと最悪ショック死することも有り得ます。まったくの未使用のカメラであっても、出荷時にテストを行っているので、相当の電荷が貯まっている可能性があります。紳士的には穏やかに10KΩ程度の抵抗でゆっくりと放電したいところですが、ここは一気に使い切ります。

 目的の場所は、ストロボ放電管横の円筒形のコンデンサで、その二つの電極をアルミフォイルなどでショートします。ショートする前にもちろん電源電池は抜いておきましょう。写真は多数ありますが、放電は通常一回で終わりますが、放電が美しいのでつい遊んでしまいました。

 


  
 
 
 
 

<放電動画>しばらくお待ち下さい。

 改造後にコンデンサを小容量のものに変更した後は、触れてもわずかに感電するだけです。

<改造後写真>しばらくお待ち下さい。

 正常に動作していれば、電源を入れるとすぐにイヤホンから「ポツポツ」と、毎分20回から30回程度パルス音が聞こえるはずです。
 この毎分20~30回のパルス音が、「バックグラウンド」と呼ばれる「自然放射線」です。<バックグラウンドに関連する文章:「J408γ妄想.txt」を参照>

 ちなみにガイガー管への配線は、ソケットにするかスズメッキ線を巻きつけるなど、直接半田付けしないようにすること。ガイガー管の多くは、アノード極もカソード極も半田付けできないモデルが多く、無理に半田付けすると大破するものが少なくありません。後述するように絶縁不良にも陥りやすく、素手でべたべたと触れることも避けましょう。既に触れてしまった場合や、箱入り新品以外の管を入手した場合は後述の「絶縁確保」の項を必ず参照下さい。



☆☆☆

 ここからは具体的な作例になりますが、全体が1枚の図面には収まっていません。各自が必要な機能を組み合わせて、セットを組めるように配慮しています。

最低限必要なものは、GMTプローブですが、これだけでは何の表示もできませが、他の機器や回路に信号を送ることができます。

 一般的な構成と選択肢を示すと


   検出     信号処理    表示      インターフェース   

GMTプローブA  定確度計数  メーター駆動     PCマウス
GMTプローブB  多機能計数  音表示(beeper)   ストップウォッチ 
簡易計数              キッチンタイマー
歩数計

最小構成では
GMTプローブA + 音表示

GMTプローブA + 音表示 + メーター表示 + PCマウスI/F

などですが、これだけでは歩数計を付けても正しい表示は得にくいです。

その対策として
GMTプローブA + 定確度計数(または簡易計数) + 歩数計がありますが、同時にメーターや音表示を組み合わせることが可能です。動作解説がありますので、自由に組み合わせを利用下さい。

 またほとんどの回路例は2.2v~3.6vの電源電圧で設計していますが、これはニッケル水素バッテリー×2本、単三乾電池(含むアルカリマンガン)2本、リチウムイオンバッテリー×1本のいずれでも使用できて、なおかつ長時間運用するという想定に基づいています。

従って5vやそれ以外の電圧で使用する場合は、電流制限(とくにLED周辺、高圧電源周辺)については数値を変更する必要があり、そのままでは問題が生じる場合もあります。ご注意ください。



「高圧電源とGMTプローブ」

 「写ルンです」の簡単な改造でSbM20は動作しますが、それはこの管の動作電圧(プラトー電圧とその範囲)が大変使いやすく、また安定しているからで、管の種類によってはまったく動作しません。

「写ルンです」の回路はなかなか完成度が高く、ストロボフラッシュ回路としてはよくできていると思いますが、ガイガー管を動作させるにはいささか過剰な部分や、不適切な部分があります。

 カメラのストロボ回路では、キセノン放電管を光らせるための高電圧の電荷(コンデンサーに蓄えた電力)を如何に高速度に充電するか、という点に配慮して設計しているために、小電力で使用すると効率が悪く、蓄電用コンデンサをGMTに最適化(1000PF程度)しても無駄に電流を消費してしまう。

バックグラウンド~数十カウント毎秒程度のカウントでは、低圧側電流は1mA以下にできるはずなのに、簡単改造では30mA程度消費してしまう。(しかし、このパワフルすぎる問題は、高線量時には有利に働くとも言える)

 またフラッシュ用高圧コンデンサを保護し、発光量の安定と、チャージアップの表示のためにLEDが装備されているが、これもGMT用としてはロスの原因となっている。

 このような点に配慮し、小電力・高効率の高圧電源を設計する必要がある。









 繰り返しバージョンアップとなりますが、それだけこの部分は技術的に奥が深く、また信頼性や性能に直結しているのです。決して「適当」に済ませることはできません。

高圧電源解説テキスト←click

☆このテキストではガイガーカウンターに必要な構成機能ごとに、分割して図面化しています。同じ機能でも複数のパターンがある場合、相互に互換性があるように工夫しています。また、必要な機能をすべて一つのボディー(ケース)に収めない場合でも、それぞれの機能として独立動作できるものを一枚の図面に収めています。

 例えば、計数表示部分と検出管部分を分離し、ケーブルで結んで使用したい場合、ガイガー管のみを小型の細長いケースに収めたいところですが、そのままこれを実行するとおよそ安定した動作は望めません。

なぜならガイガー管のアノードは極めて高インピーダンスかつ高電圧で、その用途に耐えるケーブルは容易には入手できません。おそらくノイズと発振に苦しめられることでしょう。

このような分離を行いたい場合は、その図面(GMT probe)に含まれるすべてをケースに入れてください。この図面の中には、ガイガー管を作動させるための高電圧の発生とインピーダンスの変換まで行っているので、どのようにケーブルで引き回そうと、どのようなお粗末なケーブル(ショートは不可)で延長しようと、安定動作します。


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 5月10日まで公開していた高電圧回路は再現性が悪く、高電圧部分にわずかな漏れがあると全体に不調が広がるという欠陥が、読者の方からの指摘で判明いたしました。謹んでお詫び申し上げます。

現在公開している回路の特徴は、より安定性を高め、低損失化をしたものですが、もう少し改良予定です。また、BGから30000CPM程度まで、電力消費も自動追従し、検出管に対する過電圧を抑止する能力も高められています。回路解説を参照下さい。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 トランスのドライブに2SB976という聞きなれないトランジスタを使用しているが、このトランジスタもストロボインバーター用のトランジスタで、探せば販売している店を見つけられるでしょう。

 ストロボインバーター用のトランジスタは、ごく低い電源電圧で効率よく大電流のスイッチングができて、高電流増幅率、低Vce(sat):飽和電圧が低いことが特徴。反面Vceは20vにも満たない低さだが、Icはこのサイズで5Aもある。このようなスペックは特徴的なので、同様のものは見つけやすいだろう。大阪ではデジットなどで取り扱いがある。

 高圧回路の20MΩはガイガー管を動作させるためのバイアス抵抗で、SbM20の場合定格では5.1MΩになっているが、動作できる範囲でできるだけ高い方が管の寿命のためには有利である。

この抵抗値が低いと、放射線を検出したときに流れる電流値がその分高くなり、電極の消耗(プラズマ化し管中に飛び散る)が加速し、ガス純度の劣化につながる。しかし高すぎると、電離通路がうまく確保されるまえにハロゲンガスでクエンチされ、放電は消失し不発に終わる。


*追記:2011_06_10
 アノード抵抗値を高くすることがメリットばかりのように記述していたが、この抵抗値を大きくすると、管そのものの不感時間(1発検出後に次の検出が可能になるまでの時間)や、管自身の内部静電容量に電荷が再度チャージされる時間(リカバリ時間)が延長され、線量増加に対してリニアリティーが悪くなる。

SbM-20では、およそ5000CPM程度から影響が顕著になるようで(主観的です・・いずれは確率論的に計算し、実測と照会する予定なのですが)、比較的に高線量・・20μSv/h(≒3000CPM at SbM-20)を計測する可能性がある場合は、アノード抵抗を指定の5.1MΩあるいは推奨限界の1MΩにすると、高線量での直線性は改善される。

しかし、先に述べたように寿命は短縮されるし、そもそもこの管の性格である、比較的低線量を効率よく検出する(半分妄想ですが、旧ソビエトではそのように使用されていた)、といった目的から考え、50~100μSv/h以上はCI-3BGなどにバトンタッチすることが得策と思います。参考までに、CI-3BGでは、アノード抵抗は上限10MΩとしなければ検出率が低下することがあるようだ。

 ガイガー管からの出力は100KΩを負荷抵抗とし、その両端から取り出している。他の方法では、アノードから小容量のコンデンサを介して出力を取り出す方法があるが、出力インピーダンスを下げる意味(外乱要素の除去に有用)で、この方法を採用している。

 以前公開していた回路では、この100KΩから直接次段へ信号を受け渡していたが、実際には100KΩと並列に位相補正コンデンサを挿入する必要があり、その最適化は組み立て時(各ブロックを接続組み合わせること)の調整として執筆する予定だったのだが、位相補正は必須ではないか、との指摘もあり、最初から固定定数とすることにしました。

 位相補正はアノード抵抗と負荷抵抗の両方に必要で、それぞれの積が同じになるように数値決定する。回路では100KΩに並列に100PFを入れたが、20MΩには同じ時定数では0.5PFとなる。そのような部品は市販されてはいないので、抵抗を0.1mmの銅板などで、容量作成するが、無くても問題ないようではある。

 位相補正が無い場合、ガイガー管からの1発のパルスで2カウント以上の計数をしたり、カウンターの挙動が異常の場合は、これが原因のことが多い。配線の引き回しでも変化するので、数値は柔軟にとらえていただきたい。この内容については、組み立て技術の項で解説予定です。

 旧来の回路では、低電圧動作を標榜していたが、やはり電源電圧の変動で発生高電圧も変動します。安定化のリクエストも多かったので、高安定版の回路について、HT7737(HOLTEK社)というスイッチング・レギュレーターを採用することにしました。HT7737は再現性重視版でも使用できるので、安定化を図りたい方はご利用下さい。

 TC5032カウンターの回路でもHT7737を採用していますが、HT7737を兼用しないで下さい。HT7737は小さななりですが、意外と出力電流も大きく、両方の電力を賄うことも十分に可能なのですが、それぞれの回路ブロックはそれぞれのノイズを電源ラインに撒き散らし(カウンター回路はLEDのダイナミック駆動信号、GMTプローブ部分は、バーストパルスまたはリンギング信号)、ときにそれらが相互に干渉する場合があります。

(詳しくは「組み立て技術」の項を参照)この干渉を避ける最も有効な方法の一つが、「独立にレギュレーターを入れる」という方法です。)

高電圧測定の試み ←click



「管の絶縁確保について」

 高電圧(高電圧に限らないが)高インピーダンス回路は特有の作法がある。高いインピーダンスを保つには、指紋の付着、電解質の付着が極めて有害で、電流(ピコアンペアオーダー)がイレギュラーに指紋や電解質に沿って流れてしまい、症状としては電圧のロス、ノイズの発生などが「必ず」発生する。

このことは数百MΩ以上のインピーダンスの回路では致命傷で、作法以前に回路の配線や取り付けも「ガラススタンド」や「テフロンスタンド」を使用し、組み立ても入念に無水アルコールなどで拭き清めながら行う必要がある。

 この分野は私の専門分野で、高電圧を使用するコンデンサーマイクがまさにこれにあたる。マイクロホンの場合、通常は1GΩ以上なので、とくに厳しく、それに比べればガイガー管などちょろいものだ。

 回路上は高圧コンデンサ、高圧ファーストリカバリダイオード、ガイガー管のアノードへの配線などがこれにあたる。できれば基盤を介さず、空中配線かスタンドを使用するべき。

 それ以前にこれらの部品やガイガー管の絶縁部分をべたべたと触らないこと。

 もし触った覚えがあったり、入手前に何者かが触った可能性がある場合は、拭き清めるべき。



「どこを拭き清めるのか」

 高圧コンデンサやダイオードはそれぞれの電極と電極の間。ガイガー管ではSbM20の場合は+表示のある電極とボディーパイプの間のプラスティック部分、CI-3GBの場合はガラス部分全体。

 方法は「汚れていない」「新品」のめがね用マイクロファイバークロスなどに少量(振り回しても飛び散らない分量)の無水アルコールをしみこませ、適度な力でふき取る。組み立て済みの回路の場合は、綿棒などを用いて同様に飛び散らない量の無水アルコールで何度も入念にふき取る。

 高湿度環境や海岸などで使用の想定がある場合は、高周波ワニスを塗布することも有効な方法(もちろん拭き清めの後に)。

 ガラス製ガイガー管には、透明なガラス管のものと黒塗装されたガラス管のものがある。黒塗装には光子に進入を抑制する効果だけでなく、β線に対しても感度を確保するため処理で(詳細はよく理解していないがコンプトン散乱の利用・・?)、このため管の概観である程度その感度線種がわかるのだそうだ。

おおよそ透明ガラス管はγ線用、黒塗装ガラス管はγ+β線用のことが多い。この黒塗装が問題で、アルコールを含み、多くの有機溶剤で影響を受ける場合があり、故に拭き清めも最低限にしなければならない→→素手でべたべたとさわらないように注意して扱う必要がある。

 管のケースへの実装も、このような事情に配慮し、固定(対ショックも必要)方法を考える必要がある。

 ガイガー管のスペックにある推奨バイアス抵抗値は、このような事情も考慮され、ソビエトでは低めになっているのかもしれない。


☆mini Q & A
 
Q:高電圧出力がプラトー電圧に達していないようだが、どうしたものか。(バックグラウンドはカウントしているようだ)

A:まず高電圧出力を正確に測ることそのものが困難です。これはテスターの入力インピーダンスでも、この高圧電源装置にとっては負荷として重すぎるためで、どうしても直接測定をしたい場合は、入力インピーダンスが1GΩ以上のプローブを用意するか作るかしか方法はありません。もし、正常にバックグラウンドをカウントしているなら、必要な電圧は発生していると考える。

 写ルンですの簡易改造で作成した高圧電源では出力電流が大きく、高圧コンデンサの両端ではおおよその電圧は測定できます。

 その状態で正常動作を把握してから、オリジナル小電力高圧電源を作成すべきでしょう。(その場合でもガイガー管の両端では電圧がほとんど見られない→それは正常です)


Q:高電圧出力がプラトー電圧に達していないようだが、どうしたものか。
(バックグラウンドもカウントしない)

A:左の555の3番端子で正常に数十ヘルツが出力されているなら、回路のどこかで電流が漏れて(リーク)電圧が
 低下している可能性がある。「絶縁確保」で示される方法で、高電圧部分(トランス2次側のすべての部品)を
 清拭し、リークを退治してください。

   ガイガー管は正常であるなら、カウントしていないときにはまったく電流は流れず、負荷抵抗100KΩの両端には
  いかなる電圧も検出できないはずだが、もしデジタルテスターなどで直流電圧が検出される場合は、管のリークの
  可能性もあります。(ただし高圧電源起動直後は、管の静電容量を抜けて発振周波数の脈流が検出されます。
  その脈流はイヤホンでも確認できます)
   
   何らかの理由で管そのものにわずかなリークがある場合、高圧電源の発振周波数を上げ調整することで、
  動作するようになる場合があります(例えばSbM20を4本並列で使用する場合など)。そのような場合は図面左側
  の555のR2(1MΩ)を470KΩ程度にすると改善できる場合があります。
  
   いずれにしてもガイガー管を入手したら、すぐに確実に動作する回路で動作確認を行うべきです。雲をつかむ
  状態では前へは進めません。立ち返る原点を持つべきです。



「ガイガーカウンターによる定確度計測」

 原発事故以来、様々な方が多くのサイトでガイガーカウンターの記事を発表しているので、utsunomia.comではできるだけそれらと重複しない内容にしたい。本来はガイガーではなくシンチレーションのはずだったが、それはもう少し先に発表します。

(試作検証済みですが、写真等はしばらくお待ち下さい)


 ガイガーカウンターは一般的に一定時間あたりのカウント数をもって、放射線の強度としている。一定時間とは1分、10分、1時間など、その時間の中にどれくらいの荷電粒子や電磁波の入射数があったかを計数する。

 しかし確率論的には、一定時間の密度であっても、入射数が少なければ少ないほど「確度」が低下し、ノイズと有意な信号の識別が困難になる。

 自作した場合、なんとなく反応するらしいことはバックグラウンドで判断できるが、それ以上をどのように認識すればよいのかわかりにくい。

 また自作を行う場合、計数はカウンターという回路で行うが、桁数が多いと回路そのものよりも表示部分の配線でくじけてしまうことが多いようだ。10年ほど前までは多機能なカウンター専用のICや、組み立てキット(秋月電子といえばカウンターキット!!であった)も豊富だったが、現在ではあまり見かけなくなった。

 完成品である歩数計や電卓をこの目的に流用すること(歩数計では、補数を検出する「スイッチ」が内蔵されているので、この部分に放射線入射パルス入力をくわえる。電卓では動作前に「1」「+」と入力し、あとは「=」キーにパルスを与える。歩数計よりは若干速い)も、一つのアイディアではあるが現実は厳しく、歩数計のほとんどすべてはおよそ3Hz以上の入力を行うことができない。

そんなに遅いカウンター回路があるわけはなく、私も最初(随分むかし)はチャタリング防止の簡単なフィルター・・くらいに思っていたが、解析してみると入力回路にスイッチドキャパシタフィルターの変形のような強力なLPFが内蔵されていて、簡単にはバイパスできないことも判明。

 しかし小電力で、表示込みの機能としてこれほど安価なものはないので、今回の作例でも下二桁はハードロジックで、それ以上の桁を歩数計で行う回路は多用している。

 このようにカウントした数値を表示しようとすると、敷居が高くなってしまうので、何か方法を考えるべき。

 据え置きで使用したいという要望もあり、ログを残したり統計的処理を行えるように工夫したい。そのためには、PCとのインターフェースを考える必要がある。


歩数計のカウント速度の向上について
 ←click



「定確度計測とは」


 一定時間のカウント数を計るのではなく、一定カウントに達するまでの時間を計測する方法である。
 詳しくは「換算」テキストを参照いただきたいが、確度(確かさ)はカウントした数で決まるので、定確度計測と呼ぶ。
 
 利点としては本体に必要な回路は単なるカウンターで、表示は必ずしも必要ではなく、よく使うカウント数がプリセットされていればよい。代表的には、10、100、1000、10000カウントを用意。カウントは74HCロジックを用いるが、表示が無ければ単に数珠繋ぎにするだけですむ。
 カウントの開始とカウント満了までの時間計測は、ストップウォッチを流用するが、セクションラップ表示機能を利用する。
 この機能は周回(LAP)毎の時間をLAP毎に表示固定で表示する機能で、さすがに100円均一の製品には搭載されていないが、ホームセンター扱いの1000円未満の製品には搭載されているものがある。(カシオ社HS-3Vなど)
 ストップウォッチとの接続はフォトカプラー経由で、安定に動作。ストップウォッチ側の改造はリセットスイッチにパラレルにフォトカプラ・トランジスタが挿入されるだけなので、本来のストップウォッチ機能は温存される。


☆PCとのインターフェース
 PCとの連結は、数値を送る必要はないので、カウント満了ごとにパルスをPCへ送出。PC側ではその時刻を保存すればよいことになる。
 ハードウェア的には、マウスのホイールクリック(他のスイッチも可能だが)スイッチとパラレルに、フォトカプラ・トランジスタと接続するのみ。

 このような目的に合致したソフトは、StillGreen氏作のフリーウェアSGWatch.exeが好適。このソフトはCSVファイル形式でログを出力できるので、そのままエクセルなどで読み込み、グラフ化することも可能。

 また通常の「単位時間当たりのカウント数」への変換も容易。

 SGWatchを推奨する理由は他にもいくつかある。他の多くのストップウォッチソフトと異なり、このソフトはもともとどちらかといえばロガーのようなニュアンスが強く、時間測定そのものも純粋にプログラムで行っているのではなく、PCに内蔵の時計チップを常に参照する構造(推論だが・・)になっている。このため、PCが休止モードやスタンバイに入っても、計時そのものは続行し、次に目覚めたときにも計時しながら再開される。もちろんスタンバイ中や休止中に受け取ったパルスは無効になるが、それまでの情報は失われない。

 もう一点このソフトの特徴に触れると、操作ボタンのカスタマイズ機能が充実しており、キーボードのキー、マウスのキー、それらのアップエッジ、ダウンエッジの設定があり、自作機器のつなぎこみが大変楽であること。

 さらにPCのマシンパワーに応じたカスタマイズが可能で、1秒以下の表示や桁数やフォントの使用で消費マシンパワーが変化するが、用途に応じた設定ができる。例えば、自宅設置常設で観測する場合は、自分のメインPCではなく退役したロースペックマシンにさせたいところだが、そのような場合は表示フォントを小さく測定精度も1/10秒程度にしておけば、ペンティアム3、クロック400MHz程度のマシンでも問題なく動作できるなど。

 もちろんどなたか専用のソフトを作っていただければ、とてもうれしいです。
(その場合は是非連絡してください。定確度オーバーラップ解析のアルゴリズムを組み込んでいただきたいため・・です)

 この回路図ではリアルタイムの線量表示は、思い切ってアナログ針式(3レンジ)のみとしました。付属回路として積算線量計(歩数計による総カウント数表示)機能と、測定プログレスバー機能を付けてあります。

 LED表示に7セグメントの数字表示をせず、10素子バーディスプレーを用いている理由は、7セグの場合、表示する数字によって大幅に消費電流が変化し、同じ消費電流で比較すると7セグ表示は大変見づらいこと(10素子バーの場合、点灯しているLEDは常に1つであり、消費電流はまったく変化しないため回路動作を安定させやすい・・・消費電流の大部分はLEDなので)。

また、カウントアップのリアルタイム表示(とくに下の桁)はめまぐるしく変化し、7セグでは「8」しか見えないが、バーではアップカウントしている速度を感覚的に見ることができるなど。反面、数値としての読み取りには慣れが必要。


定確度カウンター回路解説へ←click



「なぜPICやAVRでカウンターを作らないのか」

 PICやAVRを用いた回路やプログラムは既に多く発表されているし、だからといってそれらが作りやすいわけではない。それらの作業環境があり、使い慣れている人には難易度は低いが、そうでない人には敷居が高すぎる。

 PICやAVRを使用し多機能を極めることは魅力的だが、こと放射線測定においてこれらのチップがどれくらい安定動作するかは謎で、私個人がテストをしたり、具体的な証明を提示できるものでなく伝聞に過ぎないが、RAM、CCD、CPUなどの、とくにC-MOS構造の高集積チップは、ガンマ線や高エネルギーの荷電粒子に大変弱く、ソフトウェア的にも特別な配慮を行わなければ直ぐに暴走してしまうらしい。

 とくにC-MOS構造のOxide層をこれらが突き抜けると、1/0が書き換わったりひどいときには穴が開くとも。CPUの場合は動作が必ず複数の巡回ループでできているので、影響が大きいらしい。(またこの巡回ループ(ルーチン)そのものも問題で月並みなプログラム技術では、高速なカウント(毎秒10000カウント程度)すら難しい・・不勉強なもので・・・これらのプログラムでは割り込み処理によって計数入力とすることが一般的だが、私はうまく読み落とさない割り込みが苦手で、結局外付けハードで強制的にハンドシェーク認識させようとしてしまう=外付けプリスケーラー・・・TTLの方が楽、という思考になってしまう・・誰か私を説得して下さい)<定確度カウンター回路解説の「歩数計をカウンターとして使用する場合の工夫」の計算を参照>

*************************************************
Q & Aによると毎秒数百カウントで電源の容量上限になるのに、そこまでのカウント能力は過剰性能ではないか、との声も聴こえそうだが、ガイガー管からの出力は気ままにランダマイズされているため、電源は最大頻度の平均値に、カウンターの応答は平均頻度の5倍から10倍程度みておかなければならない。
*************************************************

 その論でいくとハードロジックで組んでもHC-MOSでは同様のリスクがあるが、単純ロジックの場合は、ループよりは影響が少ないかもしれない。また、その論が正しいなら、74LSシリーズや無印に入れ替えればよいのだろうか。そんなことを考えていたら、こうなってしまった。

 また、静的消費電流も大きく異なり、HCロジックではクロックによるダイナミック動作させていなければ、大変小さな電流値にしかならない(1カウンターあたり、2v動作ではマイクロアンペアオーダー)が、ダイナミック動作の塊であるマイクロコントローラーでは常に相応の消費電流となる。この作例での消費電流のほとんどはLEDの電流なので、別の作例ではLEDの調光機能も付けてみた。この作例でも共通アノード側の抵抗値を大きくすると消費電流は減り、暗くなる。



「カウンター専用に設計されたICを使用した回路例」


時代は各種用途にプログラムして使用できるPICやAVRが主流であるが、10年ほど前まではカウンター全般に応用できる専用ICが存在していた。この作例では東芝製TC5032Pを使用した回路例を示すが、現在このICの入手状況は大阪日本橋、東京秋葉原では完売状態であるが、地方都市の業者では現在も在庫を豊富に持っているところもあり、現在でも平均1000円程度で入手は可能(2011_04_10調べ)。

TC5032Pを用いる理由は、ガイガーカウンターのような典型的カウンターに必要な機能のほとんどを内蔵し、標準的な電源電圧で、難なく毎秒10000000カウント程度まで追従し消費電流が小さく、信頼性が高いことである。

カウンターに必要な機能とは、現在カウント中の数値と、前回カウントした結果を記憶し表示するためのレジスタを持つことで、カウントと表示を別々に行うことができるため、表示は直前のカウント結果を固定表示しながら、裏のカウンターではカウントし続けることができることが利点(正確かつ安定に読み取ることができる)である。

また1チップで6桁までのカウントができて、カスケードに接続するだけで表示桁数を増やすことができる。PICなどでプログラムで作ると、各種のメッセージや算術計算ができる反面、肝心の計数速度が遅く、高感度管では読み落しが発生しやすいが、専用カウンターICではコンスタントに上限周波数まで安定して計数できることが最大の利点であろう。

 反面表示素子として現在ではLED以外の選択が難しく、消費電流を押さえ込むには一定の工夫が必要。




TC5032Pを使用したカウンター回路例解説
←click


☆ゲートタイムジェネレータとして、キッチンタイマーを流用する

 一定時間にどれくらいのカウントがあるか、という「普通のガイガーカウンター」を作成するには、その一定時間を作り出さなければならない。この一定時間のことをゲートタイムと呼ぶが、意外と面倒なのがこのゲートタイムを作り出す回路である。面倒なのは回路そのものではなく、一定時間を設定するためのインターフェースをどうするか、という問題で、単に1分だけであるなら何の苦労もない。

 しかし、食品に含まれる放射性物質の検出には、一定時間として10分とか20分(しかも正確に)の計数が必要であり、どうせ作るならどのような時間でも設定できるようにしたいものだ。

 そこでこの作例では、ゲートタイムを作る回路に「キッチンタイマー」を採用し、製作を容易にしている。キッチンタイマーは安価な100円均一でも定番で、わずか100円で数値入力のインターフェースと表示の両方が得られることは驚異に値する。1000円も奮発すれば、さらにインターフェースは充実し、温度計や時計まで付いているが、テン・キーが付いたモデルは要注意。テン・キーの付いたモデルの多くでは一度計測が終わると入力した数値がリセットされ、繰り返し動作ができない。

 くりかえし、設定した時間ごとに表示と測定を繰り返すには、人間の操作と同じ操作をロジックで組めばよいので、
計測開始
→設定時間満了によるブザー
→ブザーの停止+データの表示レジスタへの転送+カウンターリセット
→次の計測の開始
の一連のシーケンスを繰り返すように構成する。

ブザーの鳴動の検出は、ブザーと並列にフォトカプラ・LEDを接続しておくだけで確実に拾うことができる。LEDの順方向電圧は2v程度なので1.5v動作のキッチンタイマーの出力など拾えない、と決め付けている人が多いが、フォトカプラ内に使用されているLEDは赤外LEDで順方向電圧が低く、1v以下のブザー信号でも検出可能。

 また前項で触れた「定確度測定」、「積算カウント」などのモードを盛り込む。専用ICを使用することで、必要に応じて様々な工夫をハード構成することが可能であるが、反面シーベルトへの換算などの算術処理は困難である。

<TC5032P回路図>

つづく