ヘッドホンアンプDIY 試験公開版 ©Y.Utsunomia 2008-2010
この製作情報は宇都宮の自家用機材についての製作ノートの抜粋で、再現性は考慮されているものの、この製作による利用者の不利益や何らかの損害から、筆者、サイト運営者は免責されるものとします。自己責任においてご利用下さい。
<HeadPhone Amp out view.jpg参照>
○仕様・目的
ポータブル録音機器のヘッドホン出力の増力化
バッテリー動作、高安定性
高音品位
製作、再現性の確保と容易な製作難易度
部品調達性など
○製作背景
近年、多くの新世代ポータブルレコーダが発売されているが、ハイビット録音の利点を生かすには、旧来のクリップ寸前の高レベル録音から、十分にマージンを見込んだ、比較的低レベルの録音レベルに移行する必要がある。またZOOM社のHシリーズのような独自のエンファシスを採用したマシンでは、さらにそのエンファシス分レベルを低くする必要がある。もちろんエンファシス分のS/N比改善が見込めるからなのだが、そのような運用では平均録音レベルが-20dB以下になるため、内蔵のヘッドホンアンプの増幅率が不足気味になり、録音現場での十分なモニター音量が得られにくい。
またほとんどのレコーダーではポップスなどの比較的音量の大きな録音対象の場合、やはり出力が十分とは言えない。
これに加え、多くのレコーダーでは電池電源の制約から、相当な省電力化がなされ、その結果ヘッドホンアンプに余裕のある回路が選択しにくく、またライン出力との兼用化などで、ヘッドホンのインピーダンスを駆動しきれていない製品もある。筆者はこれらの設計に問題があるといっているわけではない。なぜなら、この選択によりより長時間の安定運用が得られるからだ。録音機は安定録音できてナンボでしょう。
また音量のコントロールもシーソースイッチによるアップダウンコントロールを採用した製品が多く、ボリュームが「ガリ」にならないメリットはあるものの、即座の調整に対応しにくい。
これらの問題を解決することを目標に、録音現場での使用を前提に試作を行った。
*特性は綿密に取っていますが、敢えて公開致しません!! が、
筆者が現場投入し、多くの若手も同様に実用使用していることのみ書き加えておきます。
○回路解説
電源について
ポータブル機器において、電源の問題は要であるが、006P積層電池を採用する。選択肢としては入手や安定度、価格などから単3電池2本にしたいところなのだが、簡易な回路で十分な音品位を得るには、どうしてもある程度の電圧が必要で、DC-DCコンバータの採用なども考えられるが、製作コストや再現性を考え、9V単電源動作とする。
(優秀なDC-DCコンバータが入手できるなら、20~25V程度印加すると、多くの面で特性が改善されます。TDKラムダ、cc3-0512sx-Eなど・・その場合は単3電池4本)
採用チップ
電圧の低さと中点電位の安定性(回路安定性と同義)から、擬似BTL(またはアースドライブ)形式の回路とする。内部的には正負2電源と同等、供給側からは単電源という都合のよさで、同様の回路はヘッドホンアンプとしては20年ほど前に東芝製のチップがあったくらいで、あまり採用例は無い。
アンプそのものはJRC製の高出力OPampであるNJM4556Dを採用。音色的にはやや大味な傾向はあるものの、150Ωを余裕でドライブ可能。
このヘッドホンアンプはレコーダーのヘッドホン出力に接続して使用するが、レコーダーのヘッドホン出力にヘッドホンを直接接続したときと品位の上ではあまり変わらず、単に出力のみ増力しそうに思えるが、インピーダンスが高い状態でレコーダーの出力を受け増幅し出力すると、そのような予想を大きく裏切る結果が得られることは作った者にしかわかるまい。
簡単な回路なので、「だまされた」と思って試作してみてください。高電圧供給したフルディスクリート、高速なパワーアンプに比べると多少の見劣りはするものの、見掛け以上の結果が得られるばかりでなく、様々な用途に応用できることに気付くことでしょう。
回路構成
ブートストラップ付き、非反転、中点電位駆動の交流増幅回路。
要所の部品・定数解説
入力から
入力は可変抵抗(ボリューム)による直接受け。送り出すレコーダー側から見ると10kΩの抵抗性負荷(ドライブしやすい)となるように。
+入力の100Ω(100R)はU1の発振予防効果として。無い(0Ω)と絞りきりや、最大時に寄生発振することがある。この100Ωはそれを抑制する効果があるが、OPampの型番により最適値は異なる。一般的にはこの部分に直流阻止のためにコンデンサーを挿入するが、ブートストラップ(220μF)により直流増幅率をユニティー(1倍)に制限しているために省略する。
交流増幅率は(Rs+Rf)/Rs=(1KΩ+10KΩ)/1KΩ=11/1=11倍 で、高域では100PF//10KΩ(このような//記述は並列接続を表す)の時定数でfc=150KHz程度のLPFになるように設計することが定石。この設定によりトランジェント特性とオーバーシュート特性が改善できる。
出力の100Ωは重負荷時の安定動作と保護の効用がある。
47μFバイポーラコンデンサは直流が出力されることを阻止する目的で挿入。OPampには大なり小なりオフセットによる直流が出力されるが、さらに入力系に直流が印加された場合、増幅率1倍で出力されるが、そのような場合にOPampとヘッドホンを保護する目的がある。この47μFと220μFは必ずバイポーラ(無極性電解コンデンサ)を使用すること。
10Ωと0.1μFはトランジェントの改善と発振マージンの向上が目的で、高出力回路の定型。
3KΩはこの回路の出力をラインアンプとして使用する場合に、安定度を高めクロスオーバーを改善するためのロード。
また、この抵抗が47μFの放電抵抗にもなるため、電源投入後にヘッドホンを接続した場合に起こるショックノイズの低減に効果がある。
出力端子手前の15Ωは電流分配用で、インピーダンスの異なるヘッドホンをそれぞれの出力端子に接続した場合、レベルのばらつきを低減するために挿入してある。1系統のみの出力の場合には不要。
U2aの出力がアースに接続されているが、間違いではない。この回路の最大の特徴で、0v(中点電位)をOPampで作り出している。この回路の効用で電源が1系統であっても、不安定な1電源動作にしなくてもよくなり、電源の利用率が高まる。
LEDは好みのものを使用すればよいが、ZD(ツェナーダイオード)は電源電圧の低下を警告するためのゲタで、LEDが赤や緑の場合は電源電圧が6V程度から暗くなる。LEDが白や青の場合は7V程度で暗くなり始める。
しかし、ツェナーダイオードが入手難とは難儀な時代である。
NJM4556Dであるが、高出力で連続使用したり、18V電源(006PX2)で使用すると結構な発熱があるが、気になる場合はヒートシンクを工夫しましょう。保守性を考え、OPampはソケットを使用。
回路図には表記されていないが、NJM4556Dの電源端子/アース間に0.1μF程度のコンデンサを4番、8番の端子付近に取り付けることも定型。(計4個)
<<<改定2011_01_13 パスコンについて
この記事をご覧になり製作された方からのご指摘ですが、電源回路で中点電位を作成しているU2に関して、パスコンは「True Ground」に対してとるよう情報修正します。
U2は0V(アース電位)を作り出す回路なのですが、+(または-)と作り出した0Vをコンデンサでパスすると、このオペアンプにとっては「容量性負荷」と呼ばれる良くない結線となり、その結果U2は発振しやすくなってしまいます。(場合によっては確実に発振し、U2が激しく発熱する)
発振せずに正常動作しているか確定的に診断するにはオッシロスコープなどによる観測が必要ですが、この回路の場合には、発振している場合無信号時にはオペアンプが異様に発熱(50度以上に)します。また、全消費電流も25mA以上になるでしょう。無信号時に消費電流が20mA前後でしたら(4556使用時)大丈夫と思います。
U2にパスコンを挿入する場合は、4番-8番端子間に1つ、1μF程度を入れるようにしてください。
*このパスコンは回路図上では省略されていることが多いが、どこにどのように入れるかで、随分特性や聴こえ方が変化します。既製品の場合も、改造の基本のひとつといえます。アナログ回路の醍醐味のひとつなので、じっくりとご堪能ください。>>>
<<注意>>
*一般的なスタンドアローンの装置で問題は生じないと思うが、このような中点駆動の回路では、複数回路で電源を共有する場合はアース回路に矛盾が生じ、異常な動作になる可能性が高い。電源は共有(電池やACアダプタなど)しないよう注意していただきたい。
○パネルデザイン
回路は1系統ステレオ入力、2系統ステレオ出力、電源スイッチ、ボリュームコントロール(2連動にした場合は1つ)
ポータブル録音機と組み合わせて使用するには、上記の端子、コントロールが1つの面に集約してあれば使いやすい。前面と背面、横面などは、バッグやケースにまとめたときに、端子が引っかかりやすく機動的ではない。また現場的には手探りで確実な操作ができる必要がある。
作例では電源スイッチにミヤマ製の自照式超小型トグルスイッチを採用しているが、このスイッチ、デザイン性やパネル占有面積は小さくて良いのだが、電流容量の定格が低く、このヘッドホンアンプ回路(少なくとも500mA以上は必要)の電源スイッチとして、直接電源の入り切りには無理があり、Power-Mosスイッチなどでバッファーしなければならない。作例ではSCSIハードディスクキャディに使用されていたPower-Mosの中古を再利用しているが、定格や型番が不明なので詳細は発表できない。このスイッチで直接電源ON/OFFする場合はスイッチ焼損を覚悟下さい。
スイッチのタイプはトグル式のものが良いが、レバーの短いタイプが実戦的。レバーが長すぎる場合、持ち運び時に力がかかり、折損の原因となるし、誤操作の心配もある。
作例のレイアウトは文字が入っていないこともあり、あまり美しくないが、自分としては使いやすい。それぞれをパネルの端に持っていけない理由は、内部に支柱があり、そこに引っかかるためで、この支柱を無視してレイアウトしてしまうと、支柱を切断することになり、結果、蓋が閉まらなくなるので注意。
<InSide view.jpg参照>
<InSide view2.jpg参照>
○ケース
ハモンド社製の(多分ABS樹脂製)を作例では採用しているが、このケースは電池ボックス部分が押し開き蓋になっているタイプで、大変使いやすいのだが、肝心の回路収納部のスペースが小さく、写真のように、相当詰め込まなければならない。とくに電解コンデンサーの収まりが悪く、抵抗の一部はSMDを使ってしまっています。
このケースの利点の一つは、パネル部分が1枚の別板になっており、もしパネルレイアウトに失敗してしまっても、板を切り出せば良いだけなので、ジュラ板にでも交換すれば、さらに強度が期待できる。
分解した写真でわかるように、このケースでは基盤をケースの棚レールにはめ込んでも、ねじ止めでも固定できるが、容易にケースと中身を分離できる。この構造により保守性が高く、現場での万が一の故障にも、配線の確認やOPampの交換くらいなら容易に対応できる。
<Battery cover.jpg参照>
☆製作の手引き
図面の書式や流儀にもよるが、一般的に電源の配線や0V(アース)は「配線」では表現されない。書かれていなくても配線することが当然であるからなのだが、配線の重要度から言えば、アース、±電源、各所の配線の順で作っていかなければならない。図面では「配線」になっていないからといって、後回しにしてはいけない。最初にこれらの配線を配置しよう。「太く、短く」!!
フルサイズのOPamp(DIP8pinパッケージ)では、ユニバーサル基板で4マスX4マス使い、間に2列空きができる。多数のOPampを使用する場合は、それらを縦に配置し、間の2列を電源の配線に使用すると、とりあえず短く配線できる。アースは基板の周辺に配置し、回路を取り囲むように(しかし輪にならないように、C形に)配置し、部品を乗せ終わって、最後に結ぶと楽に作業できる。
他にも省略されるが必要なものに「パスコン」がある。パスコンはIC(OPamp、ロジックIC、などアナログ、デジタルを問わず)の電源端子(4番端子、8番端子)それぞれとアース間に、なるべく最短距離で挿入するものだが、とくにユニバーサル基板では、ハンダ面に取り付けると配置が容易。
配線以前に部品がケースに収まらなくては蓋が閉まらない。とくに体積を占める電解コンデンサなどは、基板をケースに入れてみながらスペースを有効に使えるように、電解コンデンサの位置を決めていく。作例では、コンデンサを斜めにしないと支柱につかえてしまった。
あとは回路図に従い細かい部品を配置、配線していけば出来上がるでしょう(なんと無責任な!)。
<PCB1.jpg参照>
<PCB2.jpg参照>
<PCB3.jpg参照>
☆チェックメニュー
組み立て時やメンテナンス時のチェック項目
0)極性のあるコンデンサ(電源回路の1000μF)の接続が正しいか目視でチェック
1)U1とU2をはずした状態で電源を入れ、各ICソケットの4番にマイナス電源が、各ICソケットの8番にプラスがかかっているかチェック。
2)一旦電源を切り、U2のみ実装(向きを間違わないように)し、電源を投入。
電池マイナス極とU2の1番端子間、電池のマイナス極と7番端子間が、正確に電源電圧の1/2(電池の+極が9Vなら4.5Vに)なっていることをチェック。
なっていなければ、U2周辺の配線をチェック。
3)一旦電源を切り、U1も実装。電源を投入し、電池のマイナス極とU1の1番端子間、電池のマイナス極とU1の7番端子間が、それぞれ電源電圧の1/2になっていることをチェック。
なっていなければ、U1周辺をチェック。
4)電源を入れ、出力端子のアース対Lch出力間、アース対Rch出力間に如何なる直流電圧も出ていないことをチェック。
5)U1、U2など必要なものを実装し、無負荷(ヘッドホンを接続しない)無入力(入力を接続しない)、入力絞りきり、電源電圧9Vのときに、消費電流が約20mAになることを確認。(006P電池としては結構重負荷)
☆使い方
このヘッドホンアンプを使用するときに、レコーダのモニターレベル調整をどれくらいにセットしておくか。
ユニティーゲインのような概念があればよいのだが。
規定録音レベル(無歪みかつ最大)の時に、歪まない最大のモニターレベルを見つければよいことになる。録音信号が歪んでいないのに、モニターからの音が歪んでいたのでは本末転倒であるし、余裕をとりすぎてもモニターからの音のS/N比が悪化してしまう。
ZOOM社H2を例にとると、無歪最大録音レベルはエンファシスを考慮すると-12dBとなるが、それよりも厳しく-1dBの正弦波信号を論理作成(audacityまたはWaveGeneを用いて、ステレオ1KHz、-1dB、30秒程度のファイル作成)し、そのファイルをH2のSDカードに書き込み再生。そのときに本ヘッドホンアンプを接続し、ヘッドホンアンプのレベル調整を十分に下げ、その出力をFFT(WaveSpectraなど)で観測。
歪が発生しない、レコーダーの最大モニターレベルを求める。(エンファシスを考慮すると-12dBとなるので、それよりも11dB厳しい数値となる)それによると、ディスプレー上の読みで、”74”を超えると歪が増大し始めるので、H2のモニターレベルは74または73が最適ということになる。(仮にエンファシスを考慮すると95となるが、どちらを採用するかは運用上のスタイルによるだろう)
他のレコーダーでも同様の方法で、最適値を割り出すことができるが、この数値は、運用上はむやみに変えずに原則として固定で、モニターレベル調整は、当ヘッドホンアンプのボリュームでのみ行う。
OPampによるヘッドホンの直接駆動や中点電位ドライブに不安がある方は、スペアのOPampをビニール袋にでも収め、ケース内に入れておくと、何かと役立つこと請け合いです。
☆謝辞
回路図ドローツールに水魚堂氏作、Bsch3Vを、画像変換ツールにIrfan Skiljan氏作、Irfan viewを使用させていただきました。
また回路図データとして、.gif形式とともにBsch3v形式のファイルを同梱しています。Bsch3vをダウンロードすれば、私の図面のオリジナル素子キャラクタをパーツとして利用できます。
Q and A
このヘッドホンアンプ回路をutsunomia.comで公開して、予想以上にレスポンスがあり、また、説明不足のところもあるのか、2ちゃんねるスレッドや、メールによる質問も多数寄せられました。また、質問やスレッドの書き込みを整理してみると、内容はコンデンサの耐圧と、OPampの周辺事情の2つに集中しているようです。
コンデンサーの耐圧の根拠
コンデンサーには耐圧(耐電圧)という概念があり、その電圧を超える電圧印加は、コンデンサー内部の絶縁層を破壊し、液漏れや爆発の原因になります。また、破壊に至らなくても特有のスパイク状のノイズや、歪の原因になります。極性のあるコンデンサーでは、指定される極性の逆の電圧を印加すると同様の問題が生じます。同じ電解コンデンサーでもかつてオーディオの標準であった、タンタル電解コンデンサーでは瞬間の、わずかな電圧であっても逆電圧は即座に「故障」を意味していました。
このヘッドホンアンプ回路で議論や質問の原因になっているのは、電源回路の1000μF X2の部分で、私が18V(006PX2)でも動作できる、と記述した部分です。定番な正負2電源の回路ではそれぞれのコンデンサの耐圧は、供給される全電圧(006PX1では9V、006PX2では18V)以上必要というものなのですが、これによると、回路図にある16V耐圧が低すぎて、18V運用が危険ということなのだと思います。
しかし、これは「定番回路」の話で、定番回路の電流の集中ポイントはこの中点で、すべての回路上の電流の起点(あるいは終着点)になります。つまり、この中点に対して負荷が接続され電流が取り出されるために、重負荷大振幅時には、片方のコンデンサだけ放電し、もう一つのコンデンサに供給全電圧が印加される瞬間があるためです。(あるいはアンプの出力段のSEPPの片方が壊れた場合やDCを全力出力している場合も同様)
ところが、本ヘッドホン回路では、このコンデンサ直列の中点部分には「絶対」に電流は流入も流出も無いのです。なぜなら、この「真の中点」に接続されているのはU2の+入力のみで、回路のアースとは完全に切り離されているからです。U2の動作モードはユニティーゲインアンプで、このときの+入力の入力抵抗は4556の場合で、数十MΩ以上にもなります。ただし、U2が破壊されたり、オーバーロード状態(フィードバックが正常にかかっていない状態)では数十KΩまで低下します。
出力側から回路を眺めると、U1の出力のプッシュプルとU2の出力のプッシュプルに挟み込まれた形になり、BTLのドライブ状況と同じになります。BTLと異なるところはU2の出力が振れないことでしょう。しかしダンピングファクターなどはBTLとおおよそ同じになります。実際に負荷に流れる電流は「真の中点」ではなく「真の中点のコピー」から流入流出しているので「真の中点」には上記のU2の故障時以外、影響が及ばないのです。言うまでも無いことですが、この真の中点の電圧はコンデンサ左隣の10KΩの分圧回路に依存します。
電流の流入流出が無ければ真の中点電位は、正確に電源電圧の1/2をキープすることは、オームの法則、キルヒホッフの法則から明らかでしょう。
ちなみにアムクロン社のパワーアンプや超大出力のパワーアンプでBTL(あるいは擬似BTL)構成が多い理由は、キープすべき中点電位が不要で、単一大電源(内部的にはドライバー回路などは正負2電源だが)で済むからだ。
自作と言うことで「あらゆるトラブル」に対応・・例えば10KΩの直列を間違えて、10KΩと10Ωにしてしまったり、を想定するなら、確かに耐圧を25vとする方がよいかもしれません。<16Vになっているのは上記の理由と小型化以外に根拠はありません。>
25V耐圧に関して、それ以外に問題は無いので、スペースの余裕があるなら、その方がより安全と思います。
バイポーラコンデンサー問題
電源の1000μF以外、すべての電解コンデンサがバイポーラ型(無極性)指定になっていますが、必ずバイポーラ型を使用してください。このような正負電源回路で、能動素子(本機ではOPamp)側を+に・・などの作例を見かけますが、何の根拠もありません。どちらに+が印加されるかは「完全に不明」です。故意にバイアスを印加する手法もありますが、また、バイポーラ型の不完全さを指摘する声もありますが、バイポーラ型の採用が合理的といえます。
U1出力の100Ωについて
4556はOPampの中でも突出した高出力で、とくに本機のように低い電圧で運用している場合には内部の保護回路がほとんど動作しません。一般的なOPampの内部設計(出力が改良されていない場合)は、大出力時の想定負荷インピーダンスは4.7KΩ程度(でそれ以上では電流制限が動作)なのですが、4556のそれは200Ωと低く、大振幅時の出力内部抵抗は最大で100~150Ω程度に設定可能なようだ。また、電源電圧が本機のように低い場合、その保護回路も動作せず、行くところまで行ってしまう可能性が、とくにU2ではありますが、U2の出力には直列抵抗を入れることはできません。どうしても何かしたい方は、U2の出力にSEPPバッファーをディスクリートで組んで入れると効果的です。
U1の出力に直列の100Ωは、無ければさらにダンピングの効いた高品位音になりそうな気もするが、実際には電源のか細さが露呈するだけで、品位は逆に下がってしまう場合もある。やはりインピーダンスマッチングをとった方が得策なようだ。もちろん保護としても有用だ。
Q&A
Q: DLG社などの006P型リチウムイオンバッテリーで起動できない。
A: 電源を投入した際の突入電流が大きいため、バッテリー内のポリスイッチ(通称、プロテクトと呼ばれる)が作動し、遮断状態になり、結果的に起動できません。多段式スローオン回路などを実装すれば起動可能になります。
Q: 想定している出力インピーダンス(ヘッドホンのインピーダンス)はどれくらいか。
A: 50~200Ωで、SONY社製MDR-CD900(65Ω)を対応目標としている。