<放射線とは何か>

Q:放射線って何ですか。

A 放射線にはいくつかの種類があり、一定以上の「量」ではいずれも生命活動に有害です。γ線とX線は、目に見える光と同じ光子で、波動と粒子の両方の性質を持ちますが、それ以外の放射線はいずれも「原子」を構成する部品で、高速度で飛んで(運動エネルギーを持って)います。
 いずれの放射線も原子よりも小さいため、最寄の原子核とぶつかるまで飛び続け、何度かぶつかると停止します(停止した状態では無害です)。

 放射線は、光子であるγ線と、原子核の崩壊により原子から飛び散った原子の部品である電子(β線)、同じく飛び出したものが中性子2個と陽子2個の塊(=ヘリウム原子核)の場合をα線と呼びます。これ以外に陽子線、中性子線などがあります。
 一般的にはカタチとして不安定な放射性同位元素(原子炉の中でも発生しますが、天然にも豊富に存在します)の崩壊で発生しますが、安定な元素でも宇宙から飛来する宇宙線によって崩壊が起こります。宇宙線や宇宙線を起源とするミューオン(かつてはミュー中間子とも呼ばれていた素粒子)なども放射線と同類で、同じように検出することも、身体に影響を与える点でも放射線と変わりありません。

 医療でも用いられるX線は、γ線と同じく光子ですが、原子核の崩壊ではなく、加速した電子(真空管の中で作られる)をターゲットカソードという金属電極に衝突させ、そのときの相互作用によって発生させたものです。

 天然に存在している最も身近にある放射性物質は、カリウムで天然カリウム中に0.0117 %の割合で含まれます。ご存知のようにカリウムは生物にとって必須元素で、排除することはできませんが、この物質が放射性物質であることを生物は熟知していて、一定以上の濃度にならないような機構が備わっています。
 同じく必須元素では炭素14があり、これも排除できません。これらは当然のことながら食品に含まれ、天然内部被ばくの原因です。

 一言で表せば、生物はその中で育まれ進化したと言えますが、身体にとってはストレスとして影響を与えます。また一定以上の放射線ストレスは、深刻なダメージを与えますが、この世界の中に放射線が存在しない場所はありません。

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Q:放射線は危険ですか。

A 身体が経験したことのないストレス(放射線)に対しては、それが少ない量であっても、何が起こるかはわかりません。
 また、その顕著な影響は、生命活動の重要な要素であるDNAに直接作用し、DNA切断や(間接的に)変異をもたらせます。
 前項にもあるように、放射線は様々な種類があり、γ線ひとつをとってみても、γ線を発した物質によってエネルギーが異なり、身体での透過力も与える影響も大きく異なります(γ線は直接の電離作用が無く、そのためDNAなどにも影響を与えませんが、相互作用によりγ線はβ線を発生させ、そのβ線の電離作用によって、様々な問題が生じます。γ線は間接的に有害といえます)。

 また、放射線の被ばくには、外部被ばくと内部被ばくがありますが、両者は被ばくという現象では同じであっても、シチュエーションが異なるために単純には比較はできません。内部被ばくでは、放射性物質の化学的性質によって身体の特定部分への集中や沈着が起こり、その部分での非常に高い被ばく集中が発生することが確認されている物質も知られています。しかし、研究は人道的問題、社会経済的問題で不十分なまま今日に至っており、内部被ばくの全貌や関与する物質について、未知の部分が多いことは否定しようがありません(医療で使用されるヨウ素同位体やストロンチウム同位体については、比較的豊富な知見があります)。

 しかし、太古に生命が誕生したときから(太古の方が現在よりもはるかに苛酷でした)ある程度の被ばくは受け続けていて、DNAの損壊に対してもある程度の修復能力を持っているので、今日まで生き延びているわけです。

A-2 危険であることの最も大きな要素は、その放射線現象が人間の五感では認識できないことです。すぐに自覚症状が表れるほどの高レベルの被ばくでは、すでに致命的な場合が多く、多くの場合は症状が表れるまでに4年から10年以上かかり、そのために問題の発覚が遅れることです。
 また微量物質による内部被ばくで身体的問題が発生するのに、同様に最低でも4年かかることが知られており(科学的証明ははないが、これまでの経験則は、ほぼ全てで一致している)、注意を怠る原因といえます。

A-3 原子力の利用は国家レベルの利権であり、一定以下の被ばくは許容される必要リスクと位置づけられている。このため無用に被ばくし、それを起源とする障害が発生しても、根本的な治療法がないことから十分な補償は受けられず、またそれを証明することも容易ではない。
 また発病そのものが、かなり確率的(原子爆弾の直接的な放射線でさえ、全員に死や病が訪れるわけではない)であることを盾に、安全性を過剰に強調する研究者も存在します。

**単に細胞レベルの危険があるだけでなく、社会活動的に危険をはらんでいます。

***後述の「放射線についてわからないこと」も参照

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Q:放射線は検知できますか。

A ガイガーカウンターやシンチレーションカウンターによって、前者ではその有無とおおよその強度を、後者では前者に加え、放射線を発した物質が何であるかの同定が可能です。
 計測の方法として、吸収線量(旧単位系ではmR/h(ミリレントゲン毎時)、現在のSI単位系ではμSv/h(マイクロシーベルト毎時))と放射能量(放射能強度としてBq/Kg(ベクレル・キログラムあたり))が用いられます。
 吸収線量は放射線そのものの強度(ミリレントゲンの場合は物理エネルギー量ですが、シーベルトの場合は生体に対する物理影響度)なので、「その場所」での放射線量を測りますが、放射能量では「放射性物質の量」を測ります。

 utsunomia.comのコンテンツは、「放射線量計をつくろうvol1」でガイガーカウンターの製作と利用を、vol2でシンチレーション方式による実用的な核種サーベイメータの入手と利用について論じています。核種サーベイは、その核種を知ることで的確な対応とディレクションが行えることを目的としています。(つまり、どのように身構え、どのように回避すればよいかの、効率的な指針を自己判断できるようにするための知識と装備の入手です)

(参考) IAEA原子力あるいは放射線緊急事態におけるモニタリングの一般的手順
      <放射線医学総合研究所訳>
      http://www.nirs.go.jp/hibaku/kenkyu/te_1092_jp.pdf

      IAEA放射線緊急事態時の評価および対応のための一般的手順
      <同訳>
      http://www.nirs.go.jp/hibaku/kenkyu/te_1162_jp.pdf

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Q:それらの装置は高価で厳格な校正を経たものしか、使用できないのではないか?

A どちらも安定した物理計測ですが、統一された単位系に換算するには(あるいは直読するには)、校正や換算係数の取得が必要です。しかし、安定な物理計測なので、いくつかの注意点を守れば、相対的な定量は十分な精度で取得可能です。
 utsunomia.comでの活動は、そのための啓蒙活動です。前項にあるように核技術は非常に強い利権に保護されたもので、そのために単位系すら利権者に都合のよい、敷居の高いものとのキャンペーンがありますが、市民はそれに臆していてはいけません。

 代表的な例は、線量当量率(μSv/h)という、物理学でも医学でもない、それでいてSI単位系で統一を図ろうという方針がありますが、これを厳密に守ることはなかなか難しく、その難しさだけがひとりあるきしている(つまり一般市民は不正確な計測しかできない・・のような)操作がありますが、ガイガーカウンターの計測値は古来からCPMと決まっていて、それ以外の何物でもありません。しかし、権威者は線量当量率こそ統一されるべき単位系とのイメージ操作(敷居の高い)によって、市民レベルの計測を無意味化しようとする意図さえ感じられるところもあります。
 オリジナルデータのCPMの持つ意味を正しく理解し、不正確である換算した結果である線量当量を参照するのと、最初から線量当量率しか計測できないことは意味も自覚も異なります(つまりCPMは不明で、μSv/hの表示だけがあるようなものを指す)。

 事故などのアクシデントや、流通している食品などに疑問があるときに、環境の放射線を計測することや流通品を計測し、退避したり流通品を使用しない自由は、保障された権利です。
 報道や風評に従うことは、何等の義務でも安心材料でもありません。

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Q:計り方は地上1mでβ線を遮蔽して・・のような規定があるようなのですが・・

A たしかにわが国の「空間線量」といわれる指標はそのように定義されているため、統一した尺度での比較を行うには、それを守る必要がありますが、それは計測の一つの方法にすぎません。地面すれすれに計測しようと水中で計測しようと、何等の問題もありませんが、それらは単純に比較できない数値というだけの話です。
 実際に事故後直ぐに到着したIAEAの関係者たちは、「空間線量」など測っていませんでしたし、地面が汚染されている場合、地面よりも空中1mの指示値の方が低くなりますが、地上高1mの方が計測の再現性は多少高まります。

 ただ、計測者が、自分が今何を測っているのかという自覚がないまま、様々な計測方法での数値が乱立すると、比較ができなくなるという問題はあります。

 計測をする場合、計測数値だけでなく計測の方法や、何を対称にした物なのかをはっきり自覚し、付帯情報もきちんと記録する必要があります。これは「空間線量」であっても、同じことです。十分な付帯情報も残しましょう。

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Q:どのように検知できるのですか。

A 放射線は、原子核が何らかの理由で崩壊したときに発生します(X線などは崩壊ではなく、相互作用によって生じ、核崩壊ではありません)が原子核崩壊は、原子が一つ二つと数えることができるように、放射線も一つ二つ・・と数えることができます。一定時間の間に何回の放射線が数えられたかということが、放射線計測の基本であり、すべてです。

注)ガイガーカウンターやシンチレーターですべての放射イベントを検出できるわけではなく、一定の割合でしか検出できませんが、その割合は放射線源との距離やまわりの状態が同じならほぼ一定していて、放射線の量に比例するので計測が成立するのです。

 ガイガーカウンターで、平常時に毎分10回の放射線検出に対して、100回は何らかの異常が起こっていることを表します。
 平常時の毎分のカウントは、検出器に固有の数で、平常時に対する異常の測定は、何等の校正も必要ではありません。しかし平常時がいくつかを知っていなければどうすることもできません。
 この平常時の状態をバックグラウンド(BG)と呼びます。計測は常にBGとの比較で行います。したがって、BGを参照しない計測(絶対値としての線量当量(μSv/h)のような)は、自己校正面で、信頼性に乏しいといえます。

<ガイガーカウンター計数パルス波形>

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 波形を見るとわかるように、ガイガーではパルスのひとつひとつはほとんど同じ高さで、いわゆる線量が上がるに従って、パルスの単位時間当たりの密度が上がっていきます。

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Q:シンチレーション方式は、ガイガー方式とどのように違うのですか。

A シンチレーション方式もガイガー方式と同じく、検出したパルスを計数する方式です。

<シンチレーション方式とガイガー方式の波形と違い>

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 ガイガー方式では常に一定の大きさのパルスが出力され、それを計数するだけですが、シンチレーション方式では、個々のパルスの高さが異なります。
 様々な大きさのパルスが混然とあるように見えますが、放射線を発した物質によって、その物質固有のパルス高さがあります。

 一番上段は、アメリシウム241という超ウラン元素(人工的に作られるウランよりも原子番号の大きい物質・・煙感知器などに工業利用されている)ですが、この物質は59.5KeVと25KeVという、非常に低エネルギーのγ線(つまり波高の低いパルス)のみを発します。
 そのため、この物質がシンチレータに近づくと、固有の小さなパルスが増加します。

注)アメリシウム241から発せられるγ線は上記の2つが主なものですが、この物質のメインの放射はα線で、これはγ線スペクトロメトリーでは観測できません。そのため外部被ばくは問題ないと考えられますが、内部被ばくでは危険性が高いと考えられます。γ線スペクトロメトリーではα線を捉えることはできませんが、パンケーキ型のガイガー管では楽に検出することが可能で、また、それがα線であることを確認すること(間に紙を1枚挟むとα線は検出できなくなるため、紙の有無によるテストで)も容易です。

 中央段はランタンマントルですが、これには色温度調整用に発光剤として天然のトリウムが含まれています。トリウムそのものはα崩壊なので、シンチレーターでは検出できませんが、トリウムが崩壊してできた物質(娘核種という)は、連鎖的に多くの物質を経由し最終的に鉛になります。この間、ラジウム、アクチニウム、ポロニウム、ビスマス、タリウムなどを経由し、壊変ごとに固有のβ線やγ線を発します。
 このためトリウム、といっても、これらの物質をほとんどすべて含み、したがって、様々な放射線が複合して観測されます。

放射線の強さはどのように表れるか



<徐々に放射性物質を近づけた場合のパルス波>

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 3つの観測データはいずれも同じように、徐々に放射性物質を近づけ、その反応を波形データ表示したものです。
 8秒付近で近づききって、それ以上は増加していませんが、いずれも時間あたりのパルス密度が増加していっています。

 放射線を発する物質によって、成分が異なっていることが理解できると思います。ガイガー方式では、同じ波高値のパルスが増加しているだけで、物質による違いはありません。

<徐々に放射性物質を近づけた場合のパルス波>

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 さらに引いた(広い範囲の時間を表示した)波形です。
 「ガイガー方式は荷電粒子検出」なので、直接的にはγ線を捉えません。そのためβ線の検出には高い検出効率を持ちますが、同時に宇宙線由来の粒子に対しても高い感度を有します。宇宙線由来の放射線は地表ではおおよそ一定の量存在しますが、そのエネルギーは高く数cm程度の鉛による遮蔽では遮断することができません(地下深くや深海では、ある程度減衰しますが、高エネルギーのものでは、地球そのものを貫通するとも言われています)。

「シンチレーション方式は荷電粒子検出ではなく、光子の波長変換(短波長から長波長への)」であるため、γ線やX線に対して感度が高く、逆にβ線やα線に対する感度がありません(ヨウ化セシウムやヨウ化ナトリウムのシンチレータの場合・・アントラセン分子や硫化亜鉛などのシンチレーターではそれらにも感度があります・・ヨウ化セシウムやヨウ化ナトリウムも一部の宇宙線由来粒子に反応します)。

 そのため鉛遮蔽により、環境に存在するγ線を弱めることで、食品などに含まれる微量の「γ線源」を検出・定量することができるわけです(環境にあるノイズを低減することで微量試料を扱える)。

 また、シンチレーターは光子の波長変換であるため、もとのγ線やX線のエネルギーは、そのまま波長の長い光のエネルギーに変換されるので、個々の発光パルスの大きさは元のエネルギーを反映します。そのためこのエネルギーの大きさごとに分類集計することで、γ線の発生源が何であるかを推定することができます。

 ガイガー方式でも、検出そのものは入射したエネルギーを反映しますが、ガイガー管の場合、そのまま数百~数万倍の増幅が行われる(ガイガー管内部で)ため、特殊な方法を用いないとエネルギーの分布を知ることはできません(またエネルギーの分布が得られても、その分布パターンはγ線のそれとは大きくかけ離れたものになります。

 上のシンチレーション方式の波形では、ガイガー方式と違い、パルスのひとつひとつの大きさ(波高値)が異なっていますが、放射線を発した物質によって、固有の波高値が多く出現します。例えば環境中に豊富に存在するカリウム40は比較的大きなパルス(波高値)として観測されます。セシウムではカリウム40の半分ほどの高さのパルスが多く出現します。

 しかし、カリウム40のパルスは一定の割合やタイミングで出現するわけではなく、ガイガーと同じように、ランダムのようにポアソン過程に従い出現します。つまり、得られたパルスを高さ毎に集計し、グラフ化したものが、γ線スペクトロメトリーなのですが、集計するには一定量のパルス数になるまで、集計を続けなければいけません。

<γ線スペクトロメトリー例>



スペクトロメトリーという集計方法


 上図のようにシンチレーション方式では、パルスの波形高さが一つ一つ違いますが、この波形高さは放射線を発した物質固有の高さ(エネルギー)が反映されるという性質があります。
 そこで、波形をその高さごとに集計すると以下のようなグラフが現れます。

<ランタンマントルのスペクトロメトリー>

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 上のグラフがスペクトロメトリー(波高分布集計図)で、下が検出波形の一部分です。スペクトロメトリーの左端にあるカウントが、そのパルス高の集計値です。
 ランタンマントルは天然トリウムを含みますが、トリウムからの崩壊物質は様々で、それぞれの発するγ線がいくつもの種類になるため、山がいくつか現れます。

<アメリシウム241のスペクトロメトリー>

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 アメリシウム241では59.5KeVと25KeVのγ線が観測されますが、それらは波高値としては低く(低エネルギー)、波形としては細かな低いパルスとなります。ところどころに大きな波高がありますが、これは測定環境中に存在するBG(鉛やウラン系列のような)のものです。

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Q:ガイガー方式の検出装置は、事故後急騰しましたが、スペクトロメータは非常に高価という噂を耳にしますが、現実的にはどれくらいの出費で装置を入手できますか。

A ガイガー方式はたしかに事故後価格が急騰し、コアデバイスであるガイガー管そのものの価格も非常に高額になりました。
 この原稿執筆は2013年5月ですが、現時点でSBM-20あるいはそれに相当する計数率のガイガー管を1本採用している製品のいくつかは、1万円内外で安定供給されており、一部の製品は3000円以下で販売されるように(おそらくは過剰在庫の処分で、今だけの価格のようにも思える)なりました。
 私は事故後3ヶ月後からガイガーカウンター製作ワークショップを開催してきましたが、その参加費用は格安の5000円でしたが、その価格をも下回る投売り状態ですが、これは購入するチャンスと思います。

 スペクトロメータですが、ポータブルの製品で10万円くらいから販売されているようですが、それらはシンチレータサイズが非常に小さく、そのため計数率(実質上の感度)が悪く、一定の結果を得るのに相当の時間(20~30分以上)かかります(ガイガー方式でも同じで、ガイガー管が小さいと非常に計数率(実質上の感度)が低く、安定した数値を得るのに時間がかかります。
(単なるシンチレーション方式の線量計は2万円程度ですが、スペクトルは得られません)
 家庭用のγ線スペクトロメータ(食品用ベクレルモニター)は低価格のもので50万円程度から製品があるようですが、これもまた非常に小さなシンチレーターしか搭載されておらず、スペクトル取得は1時間単位で必要です。
 行政機関などが所有するベクレルモニターは標準的に2インチクラスのシンチレータを搭載したものが一般的ですが、重厚な鉛遮蔽体とあいまって、価格も300万円以上となりますが計数率は高く、10分から60分程度で十分な計測結果が得られます。

 このコンテンツを執筆することを考えた材料のひとつに、低価格のγ線スペクトロメータプローブが販売されるようになった、ということがありますが、価格は1200米ドルなので10~13万円くらいになります。
 仕様は2.5インチ直径×2.5インチ長さの非常に大きなヨウ化セシウム単結晶をディテクタとした(ヨウ化セシウムとしては世界最大クラス・・またヨウ化セシウムは一般的なヨウ化ナトリウムよりも高感度で、2.5インチヨウ化セシウムは3インチヨウ化ナトリウムを上回る計数率とエネルギー特性)プローブで、もともとがロシア軍用という側面を持つために、エネルギー分解能(後述)は甘いものの、計数率と感度は大型結晶のベクレルモニターをはるかに凌駕します。
 販売はプローブ単体なので、鉛遮蔽体はありませんが、適切な遮蔽体とセットになっていれば、高速性能では300万円クラスのベクレルモニター以上のパフォーマンスを発揮します。
 1200米ドルという価格は、やや高めのガイガーカウンター程度であり、十分個人で購入(中古のアセンブリーやパーツ購入よりも安価)可能で、また「もとの取れる値段」と考えられます。

 放射性セシウムを1000Bq/Kg(ベクレル/キログラムあたり)程度の汚染食品は、遮蔽体無しで30~1分で判別できますし、校正を行えば高感度の身体スクリーニングのディテクタ(放射性ヨウ素などによる)としても使用できます。

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<放射線の身体への影響 補足>


Q:放射線が「毒」であるなら、その致死量や有害性についての知見があるのではないか。

A おぼろげにわかっていることはICRP勧告にある、年間100mSvを超えると、がんによる生涯死亡率が0.5%(がんの発生率では2倍の1%の増加・・1Svにおいてのがん生涯死亡率では5%)の増加、くらいのものですが、これすらひとつの目安に過ぎません。
 実際に甲状腺がんなどの治療では、ヨウ素131投与により等価線量で数Svの被ばくを受けますが、目だったがん発生は無いようです。

 医療による治療では特定部位への集積が知られている物質であるヨウ素同位体(甲状腺)やストロンチウム同位体(骨)が用いられますが、その量は等価線量ではICRP勧告に照らすと、当然のように問題が発生するレベルの被ばくですが、その数値は当てはまらないようです。
 一般社会へは、病気(がんなどの)の発生リスクよりも、発見のメリットの方が大きい、と説明されますが、ICRPの勧告をはるかに下回る成績だからこそ、手軽に利用されるのではないかと伺わせるフシもあります。
(私の場合、医療検査被ばくは年間100mSvを越えていますが、最初の患部の確定以外、術後の内視鏡で発見できた大きな患部も含め、何一つ発見できませんでした。「メリット」を過剰に評価するべきではありません)

 しかし核プラントなどからの漏出事故では、医療で使用されるよりもはるかに少ない量の被ばくで、統計的にも有意ながんなどの発生が生じます。事故などでは、医療被曝と比較して対象アイソトープの純度が低く、複合した汚染源なので単純な比較はできないとしても、説明の困難な状況があることは否めません。
 発言として無責任であることを覚悟で言うなら、君子危うきに近寄らず、としか言いようがありません。

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Q:放射線についてわからないこと

A 外部被ばくに関しては、広島長崎への原爆投下時の調査によって、現在の知見が確立されています。元データとしていささか古すぎるようにも感じますが統計的な処理上、このときのデータ量が圧倒的に多いため確率論的に優位であるとされています。外部被ばくに関して、医療や核プラントでの被ばくは管理された被ばくであり、その被ばく量や程度はおおよそ正確に把握されていますが、事故の場合は計測機器の配備が十分でなかったり、知識の不足などの理由により、事実上の被ばく量は精確さに欠けるといわざるを得ません。

 内部被ばくに関しては、広島長崎でのデータが非常に限定的(とされている)ため、それ以降のコントロールされたデータが使用されています。しかし、その絶対量が少ない(とされている)ことや、資金的背景によるバイアスの影響が無かったとは言えないものであるためか、つじつまの合わない部分が多くあります。

 一部の説ではチェルノブイリ原発事故以降、ヨウ素同位体による被ばくが知られるようになったということですが、事故時に一部の地域ではヨウ素剤の配布と服用が行われており成果をあげていることから、それ以前からの知見と準備があったことが伺われる。

 発言として無責任ですが、この分野は研究があってもその公開は常に限定的のようです。一般市民の立場として、君子危うきに近寄らず、としか言いようがありません。

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Q:被ばくするとミュータントになるのでは

A ミュータントにはなりません。敢えて言えばがん細胞がそれにあたりますが、生物個体としての特別の形質を持った変異は生じません。妊娠初期に高レベルの被ばくをすると畸形は発生します。
 この分野は品種の改良として、過去に様々な生命種で実験されましたが、植物や昆虫のごく一部で変異が固定できたものの、大部分は数世代で生殖不能または増殖不能に至るようです。系統は死に絶えるわけです。
 一部のがんは不死で、広島長崎で発生したとされるがん細胞サンプルのいくつかは、現在でも飼育され続けています。

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